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「よその人間の口出しを許さない、限られた世界の…」“ヴェルディ育成主義の気風”に加わった外部の血、その化学反応とは
text by
海江田哲朗Tetsuro Kaieda
photograph byMasashi Hara/Getty Images
posted2021/07/11 11:01
喜ぶ小池純輝と佐藤凌我。育成出身の選手に加えて彼らのような存在がヴェルディに化学反応を起こしている
強化を主導していた時期の小見は、高校、大学の一線級のタレントを獲得。1992年、国士舘大を中退して加入した永井監督もそのひとりである。
また、以前の東京Vがブラジル人監督を基軸として選定してきた理由もここにある。クラブに通底する基準の大枠はそのままに、しがらみのない監督個人のカラーが序列に変化をもたらした。
「時代はどんどん移り変わっているのでね。現代の育成の仕事は、いいトレーニングを積ませて成長を促すだけでは不充分。その選手に1円でも値段がつくように、買い手にとって魅力的な存在と映るように磨いていく手腕が求められます。クラブを成り立たせ、発展させていくには、指導力に加えてビジネスセンスも備えておかなければならない」
「ヴェルディの看板にリスペクトがある」
そう話す小見は、選手時代から人となりを知る江尻強化部長を「ヴェルディの看板にリスペクトがあるのが一番の長所」と評す。
90年代、江尻強化部長はジェフユナイテッド市原(現ジェフユナイテッド千葉)の中軸としてプレー。Jリーグ初代王者に輝いたヴェルディ川崎の黄金期、対戦相手として同じピッチに立った。かつて緑のシャツが放っていた威圧感を肌で知る人だけに見えてくるものがあろう。
導入される外部の血、なじみの薄い価値基準によって、生え抜きの選手はどのように変わっていくのか。「個性をうまく組み合わせ、化学変化を起こしたい」と永井監督が展望を語る、東京Vの新たなチームづくりのサイクルは始まったばかりだ。