Number ExBACK NUMBER
“20代で年収約2000万円”エリート商社マンの肩書を捨て、フィットネスで日本一になった男「なぜ“筋肉の道”を選んだか」
posted2021/07/05 17:01
text by
山崎ダイDai Yamazaki
photograph by
Tomohisa Watanabe
「あれ、俺って何がやりたかったんだっけ――?」
社会人になって数年経つと、ふと疑問が頭をもたげてくる瞬間がある。そんな経験をしたことがある人も多いのではないだろうか?
とはいえ、ほとんどの人は日々のルーティンワークに流され、そんな疑問も霧消していく。ただ、時にそんな想いに囚われ、人生を急旋回してしまう人間もいる。
板谷友弘も、そんな一人だったのかもしれない。
板谷は現在、36歳にして「クロスフィット」という競技で日本一に輝いているアスリートだ。昨年5月にみなとみらいに自身のジムを開き、8月にはアメリカで開催される世界大会である「the Games」のマスターズ部門へ、出場も決めた。名実ともに日本の第一人者と言っていい。
そもそも「クロスフィット」とは?
そんな板谷とクロスフィットの出会いは十数年前に遡る。
「もともとはアメフトの社会人リーグでプレーしていて、そのトレーニングの一環としてはじめたんです」
そもそもクロスフィットとは、歩く・走る・起き上がる・跳ぶなどの日常生活で行う動作をベースに、基礎体力アップを図る「トレーニング」の一種だ。いわゆる重いウエイトを上げるような筋力トレーニングだけでなく、自分の身体を操る体操的な要素や、バイクやトレッドミルを使った有酸素的な要素も求められ、オールラウンドな能力が必要とされる。
ただし、クロスフィットはトレーニングであるとともに、競技の側面もある。
前述の「the Games」では、世界中で25万人以上が参加するオンライン予選を勝ち抜いた男女40人の選手がフィットネス世界一を競いあい、本戦の優勝賞金は3000万円を超える。
スイス駐在になった商社時代「アメフトは引退しました」
「最初はトレーニングのつもりでやっていたんですけど、そのうちに競技としても面白くなってきちゃって。クロスフィットって、オールラウンダーが強いんですよ。パワーも、スピードも、スタミナも、体の使い方も要る。アメフトは適材適所というか、なにか一芸があればいい競技なんです。だから逆に言うと、パワーとかスピードとか、ひとつのポイントでの勝負になるとめちゃくちゃすごい人がたくさんいて……」
アメフトの社会人リーグでは、日本一を目指して戦っていた。