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【全米オープン逆転優勝】エリートゴルファーが歩んだ“山あり谷あり”人生…荒れるジョン・ラーム(26)を支えた愛妻ケリーの存在
text by
舩越園子Sonoko Funakoshi
photograph byGetty Images
posted2021/06/22 11:01
全米オープンを制したスペイン人、ジョン・ラーム(26歳)。18番グリーンでバーティパットを決めて逆転優勝を飾った
アマチュア時代のラームは屈指のエリート・プレーヤーと呼ばれていた。米国のアリゾナ州立大学へゴルフ留学し、在学中に挙げた勝利は全11勝。ベストアマチュアの証であるジャック・ニクラス・アワードを授けられ、将来を嘱望されていた。
2016年全米オープンでローアマに輝き、その翌週にプロ転向。デビュー早々の2017年の年明けに、今大会と同じトーリーパインズが舞台となる米ツアーのファーマーズ・インシュアランス・オープンを制し、初優勝を挙げた。72ホール目に奇跡のようなイーグルパットを沈める派手な勝ちっぷりは衝撃的だった。
以後、次々に勝利を重ね、ラームのランキングはぐんぐん上昇していった。
しかし、感情の起伏が激しいラームは、ときにルール委員の裁定に不服を覚えて詰め寄ったり、自分のミスに腹を立ててクラブを叩きつけたりと、マナーやエチケットで批判されることも少なくなかった。
愛妻ケリーがいたことが最大の幸運
そのたびに、ラームを上手にたしなめ、支えてきたのは、アリゾナ州立大学時代からの同窓である愛妻ケリーだった。
「ジョンはゴルフ以外では、本当に子どもみたいなんだけど、根は優しいし、ゴルフが上手くなること、勝つことばかり考えている」
良き理解者のケリーがいつも変わらず傍らにいてくれたことは、いろんな面でアップダウンが激しかったラームにとって、何よりの支えであり、最大の幸運だった。
昨年のメモリアル・トーナメントを制して、通算4勝目を挙げたときも、大きな波乱が起こった。勝利に歓喜した途端、ラームはルール委員から「16番でボールが動いたから2ペナだ」と罰打を言い渡され、彼の顔色は一変した。3打差でホールアウトしていたため、2罰打でも勝利は勝利だったが、気持ちの上では天国から地獄の味わいだった。
そんな経緯があったからこそ、今年のメモリアルでは文句なしの勝ち方をしてやろうと挑み、実際、それができそうだったのに、目前の勝利はコロナによって阻まれてしまった。