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【全米オープン逆転優勝】エリートゴルファーが歩んだ“山あり谷あり”人生…荒れるジョン・ラーム(26)を支えた愛妻ケリーの存在
posted2021/06/22 11:01
text by
舩越園子Sonoko Funakoshi
photograph by
Getty Images
人生は「山あり谷あり」と言われるが、スペイン出身の26歳、米ツアーですでに5勝を挙げてきたジョン・ラームのゴルフ人生には、あっと驚くような山と谷が、これまでいくつも押し寄せた。
そんなラームが、トッププレーヤーばかりがひしめいて大混戦となった今年の全米オープンを制し、大会史上初のスペイン人チャンピオンになったことは、浮き沈みの激しい時代を生きる私たちみんなの大きな励みになったのではないだろうか。
松山英樹がマスターズを制して日本中に感動と勇気をもたらしたように、ラームの全米オープン制覇は、彼の母国スペインと欧州各国、さらにはコロナ禍で苦しむ世界中の人々に希望を抱かせてくれた。
出場も危ぶまれていたラーム
つい最近もラームは大きな谷に陥った。
全米オープンのわずか2週間前のこと。帝王ジャック・ニクラスが大会ホストを務める米ツアーのメモリアル・トーナメントに、ラームは前年覇者として臨み、3日目を終えたときは、2位に6打差で単独首位に立っていた。
しかし、54ホールを終えて意気揚々としていたラームを待っていたのは、その日の朝のPCR検査結果が「陽性だった」という残酷な知らせだった。
即座の棄権を余儀なくされたラームは、連覇をかけて最終日を戦うことすらできず、10日間の隔離生活の行方次第では全米オープン出場も危ぶまれていた。
まさに、天国から地獄。山頂を目前にして谷底に突き落とされたラームだが、しかし彼は心まで谷底に落としたりはしなかった。
「コロナは今の時代の現実だから受け入れるしかない。幸いにして家族は全員無事だし、僕は陽性とはいえ無症状だ。その事実に感謝し、人生ではこうやって何だって起こるのだから、ゴルフの試合でも何だって起こる、何だって起こしうるんだと思うことにした。自分を信じ、すべてをポジティブに考えた」