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サニブラウンが語る東京五輪での“壮大な目標”「100m、200m、リレー、すべてで金メダルを」
text by
加藤康博Yasuhiro Kato
photograph byUDN SPORTS
posted2021/06/24 06:00
自身の日本記録9秒97は山縣亮太に更新されたが、日本選手権で2冠を見据えるサニブラウン
泰然自若というべきだろうか。初戦後の会見の言葉だけでなく、それ以前のレースを走っていなかった間もサニブラウンの発言は常に落ち着いていた。
シーズン前の3月、彼に直接話を聞く機会があった。来たる東京五輪で掲げた目標は100m、200m、そして4×100mリレーすべてで金メダルを獲得すること。では世界中の注目が集まる100mでの目標達成のためにどんなプロセスを歩み、途中でどのくらいの記録を出しておきたいか。そう質問すると彼は一笑に付すかのようにこう答えたことが印象的だった。
「想像すると気持ちが昂ってしまう」
「考えたこともないですね。オリンピックの舞台で速く走れればそこまでは正直、どんな形でもいいと思っています。ピーキングを持っていくのはあくまでオリンピック。それだけです」
目指すオリンピックのファイナルについても「想像すると気持ちが昂ってしまうので、あまり考えるのは良くないかなと思います。自分にできることを積み上げ、毎日コツコツと課題をクリアしていく先にあるのだと考えています」と自然体で準備を続けると語っていた。東京五輪までは結果に一喜一憂しないという姿勢もブレていない。
9秒台の強豪たちと共に練習
落ち着きの背景にはここまでのトレーニングが順調だったことも大きい。2019年11月にプロ転向し、2020年8月に現在のタンブルウィードTCへと練習拠点を変更。2017年に師事していたレイナ・レイダーコーチの指導を再度仰いでいる。
当初、コーチからは「以前より重心が下がり過ぎている」との指摘を受けたというが、それも今は高く維持できるまでに改善した。また課題としていたスタートも動きにばらつきをなくすために再現性を高める練習を続け、5月のレースでもその成果を垣間見せている。
2019年に当時の日本記録、9秒97を出した時に「間延びしてしまった」という60m以降の走りも腕振りを重視しながら、ストライドをコントロールする取り組みを続けている真っ最中だ。
5月のレースではこの最後の部分こそ発展途上の印象を受けたが、そこまでは決して悪い動きではなく、本人も「最初の部分は2019年と比べても、結構いいスタートの出方ができていたので、そこは練習通りにできていて良かったなと思います。強みの後半もバラけて失速してしまうところが少しずつ直ってきているので、そこをもう少し伸ばせたら」と一定の手ごたえを口にした。