「しょっぱい相手とやらせんな」

　LIDET UWFのテクニカルオフィサーであり渡辺壮馬と組んで第2試合に出場した田中稔は、特にインパクトがあったハードヒットの選手として川村亮と和田拓也を挙げている。川村はメインで伊藤貴則にKO負け、和田は松井大二郎と両者同ポイントのドロー。勝てなかった2人に凄味を感じたのだという。

川村亮

　同じことを思った観客も多いだろう。川村はハイキックで逆転負けを喫するまで、打撃でも寝技でも若い伊藤を圧倒し続けた。和田は大会前から誰よりもLIDET UWFへの怒りを発信してきた。“盛り上げ”のための言葉でないことは明らかだった。試合では松井に見せ場を作らせない。ほとんどの時間でトップもしくはバックのポジションをキープし、ペチペチと顔を張る掌底で嘲った。曰く「地獄の15分」。川村も和田も結果は結果として、それ以外のところでたっぷりと強さを見せつけたのだった。「今日は遊んだだけ。しょっぱい相手とやらせんな」と和田。

和田拓也（上）

　第2試合、関根と組んでダブルバウト（タッグマッチ）で勝利した阿部諦道は言った。

「最終的には何クソという反骨心ですよ。僕たちがやってきたことを“なし”にはさせないという反骨心」

　ハードヒット勢の“本気の怒り”も伝えてくれた。

「何が怖いって控室の緊張感ですよ。リングより緊張するんですから。試合になったら“やっと控室から出れた”って（苦笑）」

ギスギスした雰囲気が対抗戦の最大の魅力だった

　ハードヒット勢は大会前、リング上で合同練習を行なった。普段はやらないことだ。団結力を高める意味もあるが「（GLEAT勢への）マウント、威嚇じゃないですか、あれは」と阿部は言う。練習が終わると控室にこもって一歩も出ない。密室の中で闘志と殺気と怨念を溜め込むだけ溜め込んで、彼らはGLEATの選手たちを圧倒したのだ。GLEATでまともに太刀打ちできたのは、ハードヒットのレギュラーでもある飯塚優（松本崇寿にポイント負け）くらいだった。

飯塚優（左）

　大会後の総評で、田村潔司は「もう少しお客さんに伝わる試合をしないと。お互いのいいところを引き出すような試合ができるといい。対抗戦だからかもしれないけど、今回はお互いの技量、いいところを潰し合っていたので」と語った。

　田村が目指す、動きが多く技術で観客を沸かせるような闘いではなかったのだ。だがまさにそれが、ハードヒット勢の狙いだったのだろう。勝とうが負けようが一方的に力の差を見せつける。ギスギスした雰囲気こそが、この対抗戦の最大の魅力だった。

　逆に言えば、LIDET UWFの出現によってハードヒットの存在が際立ったとも言える。佐藤や和田が見せた感情が暴発するような試合は、ハードヒットの“仲間同士”の試合ではなかなか見られないものだ。

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