濃度・オブ・ザ・リングBACK NUMBER
「腹立たしいんですよ」“2021年のUWF”は殺伐とした対抗戦に 佐藤光留はなぜ田村潔司に激怒したのか?
text by
橋本宗洋Norihiro Hashimoto
photograph byNorihiro Hashimoto
posted2021/06/17 12:07
佐藤光留率いるハードヒットは“U復興”を謳うLIDET UWFの登場に怒りを隠さない
UWFは“運動体”としての役割を終えたように思えた
その後、UWFは選手と経営側が対立、さらに選手同士も揉めて3派に分裂。それぞれの形で“U”を体現あるいは模索していく。藤原喜明が設立したプロフェッショナル・レスリング藤原組を経て、船木誠勝と鈴木みのるたちはパンクラスを1993年に旗揚げ。“ハイブリッド・レスリング”、“21世紀のプロレス”を標榜したパンクラスは、いわば“純・格闘技”。今では、パンクラスはオープンフィンガーグローブ着用、UFCと同じくケージ(金網)で闘うMMAイベントとなっている。試合をするのはプロレスラーではなく、アマチュア大会を勝ち上がってきた男女さまざまな階級の格闘家たちだ。
強さを追い求めるプロレスラーたちの闘い、挑戦、あるいは実験。それがUWFだった。“運動体”の所以である。プロレスの強さを背負う存在だから、高田や船木はヒクソン・グレイシーと闘う必要があったのである。
パンクラスが生まれ、ヒクソンvs高田を第1回大会のメインとするPRIDEがUWFインターナショナル出身である桜庭和志の活躍とともにブレイク。21世紀になり、UWFは“運動体”としての役割を終えたように思えた。継続的なものとして残っている“U系”団体は、MMA大会となったパンクラスだけだ。
プロレスの根幹には強さがなくてはいけない
だが、2021年の今もなおUWFに意味を見出す者がいる。新団体GLEATの面々だ。母体は広告代理店及びエンターテインメント事業を手がけるリデットエンターテインメント社。団体のエグゼクティブ・ディレクターをUWF出身の田村潔司が務めることになり、そこからGLEATの“格闘プロレス”部門であるLIDET UWFが始まった。リデット社の社長、鈴木裕之によると、今UWFの活動を行なうことには2つの意味があるという。その1つは、プロレスラーの強さの追求だ。
「今はさまざまなスタイルのプロレスがあります。エンターテインメントとしてのプロレスも確立している。ですが、やはり根幹には強さがなくてはいけない。そうでなければ、お客様にチケットを売って見せるものとして、たとえば2.5次元ミュージカルに勝てないと思うんですよ。プロレスが、イケメンたちの歌とダンスと殺陣よりも魅力的なエンターテインメントであるためには、選手は本物の強さを持つ必要がある。
今のプロレスの良さは間口が広がったところ。でも高さも上げていかなくては。プロレスラーは柔道やレスリングのオリンピック選手よりも強い。そういうイメージを復活させたいです。むしろオリンピアンが“プロレスラーになりたい”と思えるような団体にしたい。総合格闘技で勝てるプロレスラーを育成したいとも考えています」