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ドラフト10位の「ラオウ」が後輩・吉田正尚と“凸凹ジグザク砲”に… 190cm杉本裕太郎とオリックス交流戦V【週刊セパ記録】
text by
広尾晃Kou Hiroo
photograph byKyodo News
posted2021/06/15 11:02
大学時代の後輩・吉田正尚(左)とともに笑顔の杉本裕太郎。交流戦優勝を果たしたオリックスで大砲候補がいよいよ本格化か
オリックスには吉田正尚というリーグ屈指の強打者がいる。めったに三振をしないうえに長打もあり、広角に打つこともできる。これまで各投手は吉田との対戦に神経を使ってきた。
オリックスとしては吉田の後に、これに次ぐ強打者を置いて吉田へのプレッシャーを分散したい。昨年入団したMLB通算282本塁打のアダム・ジョーンズは、実績的にも貫禄でも吉田の後ろに置くには理想的と期待されたが、日本人投手の変化球についていけず、最近は控えに回っている。
ドラ1吉田正尚、大学の2年先輩の杉本はドラ10
今年、ジョーンズに代わって4番を務めているのが、杉本裕太郎だ。杉本は青山学院大で吉田の2年先輩。社会人を経て吉田と同じ2015年ドラフトでオリックスに入団したが、吉田はドラフト1位、杉本は10位、期待度には大きな差があった。
6シーズンが経過して吉田は695安打103本塁打、打率.325、杉本は105安打22本塁打.259。ここまでは、期待度と同様の結果になっていた。
それでも徐々に出場機会は増えてはいた。昨年は8月21日に一軍に昇格し、9月に打率.320を記録、5~7番の下位打線ながらスタメンに名を連ねたが、次第に成績が下落して10月14日に登録抹消された。
しかし今季は開幕からスタメンで出場。4月23日には4番に抜擢され3安打を放った。5月以降は4番打者に定着。打率.297はリーグ5位、13本塁打41打点は、吉田の12本塁打42打点とそん色ない数字だ。
今季の杉本は左投手にめっぽう強い
今季の杉本は左投手にめっぽう強い。56打数19安打5本塁打、打率.339と打ちまくっている。また第1打席で46打数18安打7本塁打、打率.391。杉本の打棒で先制点が入るケースが多くなっている。
現在のオリックス打線には、身長173cmの左打者・吉田正尚の後ろに身長190cmの右打者・杉本裕太郎が控えている。ジグザグかつデコボコの中軸は新たな脅威になっているのだ。
杉本はMLBのフライボール革命を強く意識している。入団以来、本塁打になる角度(バルク)でバットを振りぬく打撃を心がけている。デビューから4年目までの通算安打は13本だったが、このうち7本が本塁打。「ホームランか三振か」の時代が長く続いたのだ。
しかし今年は、長打力に確実性が伴って、堂々たる中軸打者に成長しつつある。打席での構えにもゆったりした余裕が感じられる。