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戦力外通告からの栄光…アゼルバイジャンGPで表彰台に上ったペレス、ベッテル、ガスリーそれぞれの、F1人生浪花節
text by
尾張正博Masahiro Owari
photograph byGetty Images
posted2021/06/11 17:00
苦労人ばかりが並んだアゼルバイジャンGPの表彰台。左から2位ベッテル、レッドブルの技術責任者ピエール・ワシェ、1位のペレス、3位のガスリー
レース後、アルファタウリのフランツ・トスト代表は「ピエールはハミルトンの脱落によって手にした3位の座をルクレールと争い、見事な走りで守り切った。信じられないような結果だ」と、17年から一緒にレースしている愛弟子の成長を喜んでいた。
そのガスリーの前、2位でチェッカーフラッグを受けたのが、ベッテルだ。2010年から4連覇した元王者は、昨年5月に電話でフェラーリから戦力外通告を受けるという屈辱を経験。一時は引退も噂されたが、再起を誓ってアストンマーティンに移籍した。しかし、開幕から思うような走りができず、チームメートに遅れをとるレースが続く中で迎えたアゼルバイジャンGPだった。
このレースも11番手からのスタートと、決して楽な展開ではなかった。だが、その苦境をチャンスに変えた。
「鍵は、11番グリッドだった。タイヤを自由に選んでスタートできたので、僕たちは新品のソフトを履いた。それでスタートで2つポジションを上げ、長めに走ってユウキ(角田裕毅/アルファタウリ)をオーバーカットできた。でも、まさか表彰台に上がることができるなんて思わなかった。天にも昇る気分」(ベッテル)
元王者がもたらしたチーム初の表彰台
このベッテルの2位はアストンマーティンにとって、非常に大きな意味を持つ。ベッテルを獲得したオトマー・サフナウアー代表はこう言って破顔一笑した。
「アストンマーティンにとって、F1史上初の表彰台だ!!」
この2人を両脇に従えて、表彰台の頂点に立ったのはペレスだった。ペレスはベッテルの加入によって、アストンマーティンのシートを失ったドライバーだ。F1引退も考えていたペレスにチャンスを与えたのが、レッドブル。チャンピオン獲得のために、ペレスの経験が必要だと考えた。
この日のレースは、フェルスタッペンのトラブルとハミルトンの自滅に助けられた面はあるが、それまでは自力で2番手を走行していたことも事実。トラブルや波乱がなかったとしても、チームの期待以上の仕事をしており、リタイアに終わったチームメートのフェルスタッペンはこう言ってペレスの走りを称えた。