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ミスジャッジは非難されるけど、好判断は褒められない…ではなぜピッチに? ブンデス現役審判が率直に回答してくれた
text by
中野吉之伴Kichinosuke Nakano
photograph byGetty Images
posted2021/05/21 06:00
ブンデスで笛を吹くイェーレンベック氏が、レフリーという職について忌憚なく語ってくれた
ミスジャッジはどうしたって起きる
「ブンデスリーガで10年近く笛を吹いているので、この状況ならどんな判定をすべきか、ある程度以上わかっている。だから90%以上の確率で、自分の判定が正しいかどうかすぐ確信することができる。それでも、ミスジャッジはどうしたって起きる。
審判として大事なのは、自分が確信を持って笛を吹ける状況を理解することだ。自分で明確に認知して、自分の目で明確に見て、明確な判断をしたら、正しい判定をしたという気持ちを持つことができる。ところが、少しでも『あれ、いまの判断はどうだろう?』という疑念があったり、そのシーンを見たと思えなかったりしたときは、そのままプレーを続行させるべきだ。
可能な限りのシーンを意識して認知できるようになるためには、どのような状況でどこを見なければならないのか、どこに立っていなければならないのかという感覚を、極端に鋭くすることが大切だと思う」
ほとんどのシーンで明確な基準を
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――ドイツ語ではよく直感的なさじ加減を"指先の感覚"という表現で言い表しますが、そうした感覚はどうやったら身につけることができるのでしょうか? 経験を積み重ねるという以外に注意点などはありますか?
「現場での経験はやっぱり大切だ。それから試合の分析だね。選手がこうした動きをする場合、自分の目にはこう見えて、映像ではこう見えるというつながりを作っていくこと。その積み重ねが正しい判断を下すうえで助けになる。
あと、その"指先の感覚"というのはメディア的な見方だというのは指摘しておくよ。審判の立場から言わせてもらうと、"判定の際には、ある程度の許容エリアをオープンなままにしておく"という感覚で捉えているんだ。
ゲームをよりよくマネージメントするため、選手やチームを導くため、オープンにしておいた余白を上手く使うといった感じかな。例えば、片方のチームに不明確な要素があり試合を流したのであれば、もう片方のチームに不明確な要素があった場合はそちらも流すというふうに、バランスを取る能力は必要だと思う。もちろん、やりすぎはよくないよ。あくまでもルールにのっとって笛を吹いているからね。
先ほども言ったけど、ほとんどのシーンに対しては明確な基準を持って判定している。明らかなPKという場合、その前に相手側で不明確な要素で試合を流したからこちらも流すということはあり得ない」