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「甲子園772球の剛腕」安樂智大が平均143キロ“技巧派”に変身…「それ、わかるなぁ」松坂大輔の助言が24歳を救った
text by
田口元義Genki Taguchi
photograph byKYODO
posted2021/05/18 17:01
4月3日のオリックス戦5回から登板し、今季初勝利を挙げた楽天・安樂智大
自身もかつては最速150キロを超える速球派として鳴らしたが、15年にメジャーリーグからソフトバンクに復帰して以降、右肩の故障に苦しんだ。そしてこの年、ローテーション投手として復活を遂げつつあった松坂に、安樂が心を開放する。
「バッターと勝負する前にピッチングフォームとか考えたり、自分と勝負してしまっている気がするんです」
「それ、すごくわかるなぁ」
松坂と想いを共有できたことが、安樂の肩の荷を下ろさせた。それは同時に、新たな活路を見いだせた瞬間でもあった。
「今は『結果を出して見返してやるんだ』って、歯を食いしばって腕を振るだけというか。トレーニングやピッチングフォームにしても改善の余地はたくさんありますし、結果を出してからまたスピードにこだわっていければいいんで。やっぱり、155キロとか160キロは夢がありますからね」
これが2年前までの安樂の話。
2019年のシーズンオフに右ひじのクリーニング手術を受けて以降、長期離脱を余儀なくされる怪我には見舞われていない。昨季は中継ぎとして自己最多の27試合に登板。今季も同じ役割で信頼され、結果で応える。
現在地に辿り着くまで遠回りしたかもしれないが、まだ24歳。伸びしろはある。
平均球速は143キロ。成長過程の安樂が「見返す」マウンドを重ねる。
それはそれで、痛快である。