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那須川天心はなぜリスクをとってボクシング転向するのか… “井上尚弥の存在”とキックのルール変更が背景に?
text by
渋谷淳Jun Shibuya
photograph bySusumu Nagao
posted2021/04/22 17:01
キックボクシング界の神童と呼ばれる那須川天心はRISEで行われた志朗戦で勝利をあげ、武尊戦への機運が高まっている
「だから目指すのは井上選手のたどった道ですよ」
モンスターは既に世界的に高い評価を受けているが、これからもう一段も二段もステージを上げる可能性を秘めている。海外でさらに試合を重ね、質の高いパフォーマンスを披露すれば、昨年10月の試合で手にした1億円というファイトマネーはさらに高騰し、海外での評価も一段と高まるに違いない。それこそが那須川がチャレンジに価値を見出した“ボクシング”である。山田トレーナーはそう考えている。
「海外で活躍し、海外で知名度を上げて、高額のファイトマネーを手にするというのはやはり魅力だと思います。国内でボクシングの世界チャンピオンになるだけだったら、天心にとって今の状態とそんなに変わらないと思うんですよ。既にボクシングの世界チャンピオン以上の知名度も、収入も得ているわけですから。だから目指すのは井上選手のたどった道ですよ。天心の方が年下ですけど、同じ時代にいたというのは縁でしょうね」
もう1つ付け加えるなら、那須川がボクシングへ転向にあたり、帝拳プロモーションのバックアップを受けることも忘れてはならない。国内最大のプロモーターであり、世界との太いパイプを持つ帝拳のサポートを受けることは、那須川がボクシングで活躍していく上で大きな力となることだろう。
キックボクシングのルール変更という環境の変化によってボクシング技術に長けた格闘技の神童が生まれた。そして今、井上の活躍に刺激されるかのようにボクシング転向を決意した。はたして那須川は大きな夢をつかむことができるのだろうか。那須川のボクシング人生がそのスタートから大きな注目を集めることは間違いない。