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錦織圭“世界ランク81位の24歳予選上がり”に敗北…「完全復活」に足りなかった“たった1つのピース”とは?
text by
長谷部良太Ryota Hasebe
photograph byGetty Images
posted2021/03/22 17:00
ドバイ選手権でロイド・ハリスに敗れ、2年ぶりのベスト4入りを逃した錦織圭
「いや、今のレベルで十分戦えると思う。トップ10の選手でもたぶん戦える。今日は昨日(の2回戦)に比べたら3割減くらい、ストロークの伸びが足りなかったり、ちょっとディフェンシブになったり。毎試合メンタル面も変わるので、ロボットじゃないので、頭との戦いだったりもあるんですけど……」
1回戦から中1日あった2回戦と比べ、連戦となった3回戦は精神的な疲労が抜けず、ショットの感覚に悪影響を与えていた。必要なショットを瞬時に計算し、技術と体力を駆使しながら実行に移す。考えて、走り、打つのがテニス。3回戦の時点で、錦織は「考える」部分で力を出し切れていないのを自覚していた。3連戦となった準々決勝は精神的な疲労がさらにたまり、思考を鈍らせていたと仮定すると、先ほど挙げた2つの敗因も納得できる。第1セットは集中力が上がらず、最終セットのブレークチャンスでは相手のサーブを読んでヤマを張る果敢な選択ができなかったのではないか。
ショットの感覚や体力面は100%の状態に近づいているものの、いわば「精神的なタフさ」を取り戻すにはもう少し時間がかかるのかもしれない。2回戦から準々決勝までの3連戦は午後7時以降に行われた。「回復が遅れたり、次の日の調整が難しかったりする」という理由から「そんなに好きではない」という夜の試合が続いたことも、うまくリフレッシュできなかった要因になり得る。
錦織らしさは着実に戻ってきている
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2019年4月のバルセロナ・オープン以来となるツアー4強入りには届かなかったものの、2回戦で世界13位のダビド・ゴファン(ベルギー)を相手にストローク戦で上回るなど、錦織らしさは着実に戻ってきている。2週間前のロッテルダムで「本当に突然」ショットの感覚を取り戻したのと同様、今回も収穫は多かった。錦織は前向きな言葉で大会を総括した。