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錦織圭“世界ランク81位の24歳予選上がり”に敗北…「完全復活」に足りなかった“たった1つのピース”とは?
text by
長谷部良太Ryota Hasebe
photograph byGetty Images
posted2021/03/22 17:00
ドバイ選手権でロイド・ハリスに敗れ、2年ぶりのベスト4入りを逃した錦織圭
錦織は30-0から得意のリターンと驚異的なショットで巻き返すと、重圧が掛かった相手がダブルフォルト。30-40のチャンスが訪れた。ここを取ればゲームカウント4-3とリードし、勝利がぐっと近づく。ハリスの第1サーブはコートの外に逃げていくようなワイドサーブ。錦織はベースラインから大きく下がって構えたが、時速212キロの高速サーブに反応が遅れ、バックハンド側に目いっぱい伸ばしたラケットで触れるのがやっと。リターンは返らなかった。
相手が打つ瞬間、錦織はセンターにもワイドにも対応できるようなステップを踏んでいた。だが、この時までに相手サーブの精度の高さは身に染みて分かっていたはず。どちらかのコースに狙いを絞ってもよかった。それが結果的に外れるのは仕方ないが、トライできなかった。
直後の第8ゲームは攻撃的なショットに押されて背水となり、最後はフォアのミスでブレークされた。
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敗因は立ち上がりの不調と、勝負どころで積極的なプレーができなかったことに要約できる。
前者について、錦織は「原因は全く分からない。練習が良かったので、ウォームアップの時点では。(ショットの際に)体が開いてたのか、ちょっとその辺は分からない」と言った。試合の直前まで何の問題もなかったのに、本番で突然ショットの感覚が乱れたのだ。昨年9月に復帰後、3日間連続でシングルスの試合をするのは初めてとはいえ、体力面の問題でなかったことは第2セットからのプレーを見れば分かる。本人もスタミナについては「意外と大丈夫でした」と語っている。
「完全復活」に何が足りなかったのか?
では、精神面の疲労はどうか。その答えのヒントは、3回戦後のコメントにあった。世界59位のアリャジ・ベデネ(スロベニア)にストレート勝ちした試合。錦織は第1サーブがさえ渡り、第1セットのサービスゲームで与えたのはたった1ポイント。好調時のビッグサーバーのような数字だった。第2セットは少し苦しい場面が増えたが、要所で第1サーブの精度が助けになった。試合後に「完全復活したと言える状態になるために足りないものをまだ感じるか」と尋ねると、次のような答えが返ってきた。