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【センバツ】いきなりサヨナラ「9人対15人」神戸国際大付は“三塁コーチ出場&代走殊勲打”で勝った
text by
氏原英明Hideaki Ujihara
photograph byKYODO
posted2021/03/19 17:04
9回裏同点の場面。神戸国際大付、一死一、三塁。“送りバント”を期待され出場した坂本が本盗を決める
先頭の松尾優仁が左翼前安打で出塁すると、松尾の代走に関悠人を起用。さらに打席にはこの日2安打だった板垣翔馬に代えて、坂本陽飛を送った。坂本はこのとき、三塁コーチを務めていたのだが、送りバントをするために急遽起用した。
これは失敗に終わるのだが、青木監督が坂本を代打に送った理由は複数あった。
「送りバントは板垣も決してうまくないわけじゃなくて、できないこともなかった。あの場面はバントだけでなく、盗塁も想定していて、左打者の方がいいと思ったんです」
結果、一死一塁となってしまうのだが、ワイルドピッチと代打・勝木力輝斗の左翼前安打で一、三塁とすると8番・武本のところでスクイズを敢行。これが相手バッテリーのワイルドピッチを誘い、三塁走者の坂本が生還(記録はホームスチール)して、同点に追いついたのだ。
「(坂本は)どんなボールにでも食らいつくようなタイプ。あの場面で、ワイルドピッチになった時にはセーフになるやろうなと思いました」
“代走”からサヨナラ打
そして、10回裏、四死球と安打で掴んだ1死満塁の好機で、最後に決めたのは代走で出場していた関だった。背番号「8」を纏い、昨秋はレギュラーとして出ていた選手である。
高校野球はどうしてもレギュラー9人で戦いがちだ。私学のように、たくさんの部員がいて、好素材の選手を獲得できるチームでも「全員野球」をするチームばかりではない。北海がそうであったように、9人の戦力で戦うことが多い。それは、高校野球の大会の制度の問題が影響している部分もあるが、神戸国際大付はその中でも、全員が戦える戦力を整えてくるのだ。
もっとも、今日の戦いで、途中出場の選手の起用全てが想定通りになったわけではない。それでも試合展開が目まぐるしく変わる中で、控え選手のそれぞれが精一杯のパフォーマンスを出し合ったからこそ結果につながった。
殊勲打の関は誇らしげにこう語った。
「冬から1年生(新2年生)がベンチに入ってくるようになって、自分も負けられないと思ってやってきた。最後はなんとか自分が返そうと思った。控え選手が活躍することがチーム力を上げる手段だと思う」
エースの不調にもかかわらず、投手陣は3人の継投で踏ん張り、総勢15人の選手たちで勝ち切った。9人対15人。神戸国際大付の選手層がものを言った劇的なサヨナラゲームだった。