濃度・オブ・ザ・リングBACK NUMBER
キックから“卒業”予定、那須川天心が“ポスト天心”を「キツいですよ。1人じゃ無理」と表現するワケ
text by
橋本宗洋Norihiro Hashimoto
photograph byRISE
posted2021/03/13 11:04
志朗戦を制した那須川天心(右)は試合のみならずその力のある言葉で多くの人々を魅了してきた
ヒントになったのは大晦日の試合
インタビュースペースでのコメント、その最後の言葉は那須川から「そういえば」と切り出した。今回のミドルキック多用は、昨年のRIZIN大晦日大会におけるクマンドーイ戦で相手の蹴りが厄介だったことがヒントになったそうだ。
“大晦日に天心は不可欠”という以上の意味は見出しにくい試合だったが、それが志朗戦という大一番に活きた。いや那須川だから活かせた。「やっぱりどんな試合にも無駄はないんですよね」と那須川は笑顔を見せたのだった。
その翌日、一夜明け会見では試合に向けての思考が“打倒・天心”だったことを明かしている。那須川天心に勝つにはどうすればいいかを自分で考えたのだ。志朗も同じことを考えてくるに違いなかった。だから自分にどう勝つかを考えることは、志朗の作戦を読むことにつながった。
「(打倒・天心のポイントが)見えた部分があったのでそこを修正しました。(相手は)ここを突いてくるだろうなって」
だからこそ、勝つためには新しい引き出しが必要だったという。那須川天心挑戦者決定トーナメントが行なわれたのは昨年11月1日。試合決定から3カ月以上の時間があったからできたことでもあった。志朗戦に向かう日々は「有意義な時間だった」と那須川。
「RISEは実力主義。勝ち上がってきた選手しか僕と闘えない。そこで勝ち上がってきた志朗選手は僕への執念が誰よりも強かった。(そういう相手だから)準備期間で成長させてもらえた。その時に持ってるものだけで闘うという試合じゃなかった」
「正直、もう悔いはないです」
那須川は近い将来キックボクシングを“卒業”し、ボクシングに転向すると言われている。RISEの伊藤隆代表は、今後は“カウントダウン”マッチ、そしてビッグイベントでの“ファイナル”で団体最大のスターを送り出したいと語った。
那須川自身は、キックボクサーとしての残りの時間について「意味のある試合がしたい」と語っている。
「正直、もう悔いはないです。キックボクシングをある程度、広めることもできたかなと。今はRISEイコール那須川天心。他の選手にも目立ってほしい。それも含めてRISEに恩返しをしていきたいです。たとえばボクシングに行った時も、RISEに貢献できることがあれば」