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M-1本番直前に「泣いちゃうかもしれない…」錦鯉まさのりさん(芸歴26年)が相方に言えなかったひと言
posted2021/02/28 11:01
text by
中村計Kei Nakamura
photograph by
M-1グランプリ事務局
49歳の長谷川雅紀(まさのりさん)と42歳の渡辺隆、M-1最年長ファイナリストになった錦鯉。まさのりさんが本番直前のせり上がりでついに言えなかったひと言とは?(全3回の2回目/#1、#3へ)
――いよいよ自分たちの順番となり、舞台の裏にスタンバイしたときは、いかがでしたか。
渡辺 せり上がりで上がっていく間は少し緊張しましたが、階段を下りて、マイクの前に立ってからは大丈夫でしたね。あとはやるだけだと思ったので。
――長谷川さんは、リハーサルでせり上がりの練習をしたことを覚えていませんでしたが、本番は?
長谷川 うわっはっはっは。さすがに本番は覚えてます。僕も、ある人に「普段出ているライブの1つぐらいの感覚で行った方がいいよ」と言われていて、そういうつもりでいたので、そこまで緊張はしていなかったと思うんですけども。
ちょっと泣いちゃうかもしれない…
――M-1の舞台裏を記録したドキュメンタリー番組『アナザーストーリー』の中で、せり上がりで上がっていく瞬間、長谷川さんが、渡辺さんの横顔をぎゅうっと見ていたシーンがありました。あれは、なんだったのでしょう。
長谷川 僕もあれを観て、あのときの心境を思い出しましたね。せり上がるとき、(渡辺)隆にひと言、声をかけようと思ったんです。「この舞台まで連れてきてくれてありがとう」って。でも、それを飲み込んだんです。それを言ったら、ちょっと泣いちゃうかもしれないなと思って。
――本番前に湿っぽい雰囲気にしちゃいけないなと。
長谷川 これから人を笑わせようってときに、なんか変な感情になっちゃうかなと思って。
渡辺 それ、死ぬときに言うやつだろ。相方に「ありがとう」なんて。
――せり上がりのとき、そういう言葉を吐いたり、あるいは、吐こうと思って吐かなかったりという話はよく聞きますが、あのセリに立つと、いずれにせよ、芸人としてそういう心境になるものなんですね。
長谷川 かもしれませんねー。
渡辺 じつは僕は、声をかけたんです。上がる前に「雅紀さん、とうとう来たね」って。そうしたら、思いっきり噛んで「ヴん」みたいな返事が返ってきた。「うん」って言いたかったんでしょうけど。
――覚えてますか?