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初対面での卵焼きと「ゼロポイント、だせぇ」 小林陵侑24歳と葛西紀明48歳は師弟でライバル【W杯18勝】

posted2021/02/25 11:00

 
初対面での卵焼きと「ゼロポイント、だせぇ」 小林陵侑24歳と葛西紀明48歳は師弟でライバル【W杯18勝】<Number Web> photograph by Getty Images

W杯18勝を果たした小林陵侑。年齢が倍違う葛西紀明との関係性は独特だ

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長谷部良太

長谷部良太Ryota Hasebe

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 1週間ほど前、このコラムで約1年ぶりに小林陵侑を取り上げさせてもらったばかりなのに、これほど早く次の機会が訪れるとは思わなかった。

 この1週間で小林が成し遂げた快挙の連続のおかげだ。2月13日、ポーランドのザコパネで行われたW杯個人第20戦で今季初優勝を果たし、葛西紀明に並ぶ日本男子最多の通算17勝を挙げた24歳が、6日後にルーマニアのルシュノフで行われた個人第22戦でまたもや優勝。同じ土屋ホームの選手兼監督である「レジェンド」の記録に追い付き、一気に追い抜いた。

ライバルの失格によって転がり込んだ“レジェンド超え”

 日本ジャンプ界の新たな歴史を刻む通算18勝目は、まさかの展開で決まった。ルシュノフのジャンプ台はヒルサイズ97m。男子W杯では珍しいノーマルヒルで、得点差が出にくかった。小林は1回目で7位だったが、トップのハルボルエグネル・グラネル(ノルウェー)とは3.9点差。飛距離換算では約2メートル差で、逆転もあり得る状況だった。

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 小林は2回目でビッグジャンプを披露。ヒルサイズを上回る最長不倒の98.5mまで伸ばした。6人を残し、暫定トップ。カミル・ストッフ(ポーランド)ら歴戦の猛者たちを日本のエースが上回り、今季11勝と絶好調のグラネルが最後に飛んだ。

 小林の位置を示す緑のラインのやや手前で落ちたように見えたが、不利な追い風だったため風の補正点が2.8点加算され、合計点でトップに躍り出た。テレビ中継の速報では、グラネルが1位、小林は2位と表示された。

 だが、グラネルは喜びもつかの間、国際スキー連盟の関係者に声を掛けられ、ジャンプスーツなどの用具の検査に連れて行かれた。近くにいた小林は、この時点で異変を感じたという。

「あんまりないこと。すぐに表彰式をしないで、コントロール(検査)に連れて行くのは相当ないことだなと思っていたんですけど。案の定、失格になりましたね」

 グラネルはスーツの規定違反により、2回目の記録が取り消された。優勝と思われた選手が違反を取られるのは極めて異例。この日は風向きが目まぐるしく変わる中、小林は2回とも飛距離が出やすい向かい風を受けた。自然が味方した上に、2位だと思っていたところに優勝が転がり込み、「いろんな意味でラッキーだったかなと思います」と素直に喜んだ。

【次ページ】 葛西は24シーズン、小林はわずか3シーズンだが

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