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初対面での卵焼きと「ゼロポイント、だせぇ」 小林陵侑24歳と葛西紀明48歳は師弟でライバル【W杯18勝】
text by
長谷部良太Ryota Hasebe
photograph byGetty Images
posted2021/02/25 11:00
W杯18勝を果たした小林陵侑。年齢が倍違う葛西紀明との関係性は独特だ
「オリンピックも、バンクーバー大会くらいしか覚えていなくて。本当に葛西さんをすごいと思い始めたのは中学、高校くらいから。(葛西は)ほとんど日本にいないので試合とかでも会わないですし、雲の上の世界で戦っている人だなって感じでした」
2人が初めて出会った合宿での「卵焼き」
2人が初めて会ったのは、小林の入社後、土屋ホームの合宿でだった。
「コテージに泊まった時に卵焼きを作ってくれたり、おいしい物を教えてくれたりしました。(葛西は)あまりしゃべるタイプではないので、いろいろ見てまねてきたことも多いですね」
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小林が初めてW杯遠征に本格参戦したのは2016-17シーズン。個人戦の計17戦に出場したが、W杯得点がもらえる30位以内に1度も入れなかった。この時、葛西に言われた言葉をよく覚えている。
「ゼロポイント、ダセぇ」
「確かにゼロポイント、ダセぇなって」
小林は笑いながら当時を振り返る。
「確かにダセぇなって思って。悔しかったですね。それまでシーズンをフル参戦してゼロポイントだった人はいないと思うし、これからもいないと思いますけど、普通は(遠征メンバーから外されて)『日本に帰って練習しろ』ってことになるんで」
葛西は、自ら発掘した原石が苦しんでいた時、あえて厳しい言葉をかけて闘志に火をつけた。
2018年平昌五輪に出場した小林は、ノーマルヒルで7位、ラージヒルは10位に入った。ともに日本勢のトップで、自分が期待した以上の成績だった。しかし、葛西がイメージしていた姿とは違った。
「本当なら、平昌辺りでメダルをポンポンと取ってほしかった。高校時代からジャンプの素質はあるなと見ていたので、それをどう伸ばすかが課題だった」