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角居師最後のGIレースに思い出すカネヒキリとの名タッグ 「終わった」名馬を復活させた伯楽の手腕とは
text by
平松さとしSatoshi Hiramatsu
photograph bySatoshi Hiramatsu
posted2021/02/19 17:02
06年カネヒキリのフェブラリーステークス。角居師のGIラストレースは今年の同じレースになる
「ダートのディープ」と呼ばれたカネヒキリ
そんな偉大な調教師だから、当然ダート路線にも名馬を出している。15年にチャンピオンズCを制したサンビスタもそうだが、中でも特筆すべきはカネヒキリだろう。05年にジャパンCダート(GI、現在のチャンピオンズC)を制してGIホースとなった同馬は同年のJRA賞最優秀ダート馬に選ばれた。また同じ頃、同じ金子真人オーナー(名義はホールディングス)が所有するディープインパクトが大活躍していた事から「ダートのディープインパクト」などとも呼ばれた。
実際ダート路線での活躍ぶりは目を引くものがあり、初GI勝ちを飾った翌06年にはフェブラリーS(GI)も優勝。ダート路線では向かうところ敵無しかと思われた。
「カネヒキリは終わった」という声の中で
しかし、敵は思わぬところにいた。屈腱炎を発症し、2度も脚元にメスを入れざるを得なくなった。その間の休養期間は当然、長くなった。1年経ち、2年が過ぎても彼が競馬場に姿を現す事はなかった。当時、多くの人が「カネヒキリの全盛期は終わっただろう」と感じていたはずだ。
しかし「まともな状態になれば必ずまた走ってくれる」と信じていたのが、ほかでもない角居調教師だった。復活の日を信じて再入厩。脚元と相談しながら調教を課した。状態は行きつ戻りつを繰り返した。なかなか順調に進まない日も多い中、なんとか仕上げると、08年、武蔵野S(GIII)で実に2年4カ月ぶりに競馬場へ戻す事が出来た。