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親子王者なるか? 偉大すぎる父ミハエルの背中を追う、ミック・シューマッハーがF1デビュー
posted2021/02/12 11:01
text by
尾張正博Masahiro Owari
photograph by
Getty Images
「シューマッハ」の名前がF1に帰ってくる。
1990年代から2000年代にかけて7度チャンピオンに輝いた、あのミハエル・シューマッハ(ドイツ)の息子ミック・シューマッハが21年にハースからデビューする。
参戦するだけでも簡単な世界ではないF1で、レースに出走するという夢を親子で果たしたのは、これまでわずかに13組26人しかいない。
F1界に初めて親子ドライバーが誕生したのは70年代。F1黎明期の50年代に参戦していたハンス・シュトゥック(ドイツ)の息子ハンス・ヨアヒム・シュトゥックが74年の開幕戦にデビューした。この年は51年から64年まで活躍していたアンドレ・ピレット(ベルギー)の息テディ・ピレットも第5戦ベルギーGPでデビューし、2組の親子F1ドライバーが誕生した。
F1界において「父」の壁は高い
しかし、その後は長いブランクを迎える。80年代は1組も現れることなく、F1界に3組目の親子ドライバーが誕生したのは90年だった。59年、60年、66年と3度チャンピオンに輝いたジャック・ブラバム(オーストラリア)の息子デビッド・ブラバムが第3戦サンマリノGPでデビュー。彼が走らせたマシンは父親が興したチームのブラバムだった。この年の開幕2戦には兄のゲイリー・ブラバムも参加したが、2戦とも予備予選落ちし、夢を叶えることなく、挑戦を終えた。
その後、ウィルソン(72~73年、75年)とクリスチャン(92~94年)のフィッティパルディ親子(ブラジル)、マリオ(68~72、74~82年)とマイケル(93年)のアンドレッティ親子(アメリカ)も誕生したが、息子が父親を超えることはなかなかなかった。
F1で初めて父親と比肩する活躍を披露したのは、96年のデーモン・ヒル(イギリス)だろう。62年と68年のチャンピオンであるグラハム・ヒルを父に持つデーモンは、96年に念願のタイトルを獲得。F1史上初の親子2代でF1の頂点を極めたドライバーとなった。
そのデーモンと96年にタイトル争いしたジャック・ビルヌーブ(カナダ)も、翌年の97年にタイトルを獲得。父ジル・ビルヌーブ(77~82年)が成し遂げられなかった夢を果たした。
2000年代にはマンフレッド(80年、82~85年)とマルクス(07年)のビンケルホック親子(ドイツ)、悟(87~91年)と一貴の中嶋親子(日本)、ネルソン(78~91年)とネルソン・ジュニア(08~09年)のピケ親子(ブラジル)が誕生したが、最高位ではいずれも息子が父親を上回ることはなく、F1を去っていった。