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聞く耳は持たず、ただ引っ張るのみ…吉田義人が「明治史上最高の主将」になるまで【同期“幻のキャプテン”の告白】
text by
藤島大Dai Fujishima
photograph byMasato Daito
posted2021/05/01 17:01
早大との大学選手権決勝では伝説の逆転トライを決めた吉田義人
「僕らの魂がグラウンドの中に一杯いた」
決勝。後半26分。西原在日がどーんと前へ出る。さらに前へ。ではなく、ここで横へ。紫紺と白の11番がフリーで球を得た。キャプテンは切り札に戻った。ひとり、ふたり、タックルを外し弾き、左のコーナーへ躍り込む。逆転のトライ!
決勝先発に最上級生は5人。主力には3年部員が多かった。それで頂上を制した。
「吉田の姿勢にほれて、レギュラーになれない4年生が最後の最後までピリピリとした緊張感を漂わせていた。絶対に勝つんだという雰囲気ができあがりました。あいつら、みんな社会で活躍してるんですよ」
吉田主将は、戴冠直後、NHKの現場インタビューに声を震わせた。
「僕らの魂がグラウンドの中に一杯いた」
あったのではない。いたのだ。
西原副将は、30年後、穏やかに話した。
「あれは本当だったのかもしれませんね。彼にとっては。同期への感謝でしょう。私も同じ気持ちでした」
仲間を必要としなかったリーダーが仲間の心を動かし、仲間の献身に助けられた。ひたひたと力を伸ばした早稲田のつけ入るスキがなくなった。
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