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阪神タイガースのレジェンド・藤川球児がプロ野球生活で学んだ自分らしい人生の歩み方 

text by

林田順子

林田順子Junko Hayashida

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photograph byShigeki Yamamoto

posted2021/02/10 11:00

阪神タイガースのレジェンド・藤川球児がプロ野球生活で学んだ自分らしい人生の歩み方<Number Web> photograph by Shigeki Yamamoto

競うべきは他人ではなく、自分

 特に投手は必ずマウンドに立てる時がきます。そこで力を発揮すれば、最初は10試合に1回の登板だったのが、5試合になり、3試合になり……と増えてくる。

 競うべきは他人ではなく、自分なんです。過去の自分と勝負して、切磋琢磨して、負けないように頑張る。調子が良い時でも、継続を心がけるのではなく、向上心を持つことが大切です。

 だって向上心を持って取り組んで、ダメだった時に継続になるわけです。最初から継続を求めていたら、落ちていくだけです。

 中継ぎなのか、クローザーなのかも気にしていませんでした。どのポジションで投げるかは重要ではなくて、僕がフォーカスすべきは、今持っているスピードを1秒でも上げること、ストライクゾーンに細かく投げ分ける技術をいかに磨けるかということ。

 監督やコーチに認めてもらいたいという思いはあるかもしれませんが、「見てもらわなくても結構。自分ができることをやっていれば、必然的に選ぶしかなくなる」という心持ちでいれば、人の評価でぶれることもなくなるし、自分がやるべきことに集中できます。

全てを捨てた気持ちで臨んだ独立リーグ

 もう1つ野球人生で学んだのは、エネルギーがあるうちに色々なチャレンジをしたほうがいいということ。チャレンジを続けている人って、まぶしく映るし、チャレンジを続けていくと、新しいものが見えてくるんです。挑戦するって怖いけれど、若い人は失敗してもいいから、いろいろなことに取り組んで欲しい。

 世の中の人からしたら、メジャーリーグから撤退して、独立リーグに行った時の僕は野球人生最大のピンチに見えたと思います。

 ただ、僕は「なくなってもいいや」と全てを捨てた気持ちで臨んでいたんです。プロ野球選手に留まろうと思ったらピンチだけど、その環境を捨ててもいいと思うことができたら、それは新しいチャレンジになる。もちろん挑戦する前は、プロ野球選手としての経験がもうなくなるのではという怖さがありました。でも怖かったら捨てるという開き直りができたのは、大きな収穫でした。実際、あの時にしかできない挑戦でしたし、自分の人生ですごく良い時間を得られたと思っています。

【次ページ】 70歳、80歳になっても……

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