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阪神タイガースのレジェンド・藤川球児がプロ野球生活で学んだ自分らしい人生の歩み方
posted2021/02/10 11:00
text by
林田順子Junko Hayashida
photograph by
Shigeki Yamamoto
「自分にしかできない人生の送り方をしたい」と語る藤川は、メジャーリーグから独立リーグへと移籍し、無報酬でプレーするなどまさに唯一無二の野球人生を送ってきた。
自分の道を進み続ける藤川は22年のプロ野球人生で何を学んできたのか。
若い時から、自分が思い描いていたものと成果がかけ離れたら、現役を退こうと決めていました。決めていたからこそ、そうならないようにここまで頑張り続けることができたんです。
ただ、ある程度の年齢になると、体が少しずつ思い通りに動かなくなってきたことがわかる。右肩上がりの人生を送りたいと思っていたのに、今の状態をキープすることに精一杯になってくるわけです。
一方で、10代、20代の若い選手は、これからパフォーマンスが向上していく時期。
プロ野球というのは人気商売でもありますから、藤川球児という野球選手をファンに見せ続けたいという球団の気持ちはわかります。ただ、先細りしていく自分が若手のチャンスの芽を摘んでしまう可能性があるのではないか、それは果たして球団にとっていいことなのだろうか。
藤川が考えた球団への恩返し
例えば20代の時、働く先輩たちを見て、あんな風に仕事ができるようになりたい、こんなリーダーになりたいと憧れたことがありませんか? でも年月が経つと独立していく先輩もいるし、会社での地位が変わって、変化していく人もいる。自分だって1年1年考え方が変わっていくし、そもそも変わり続けるのが人生です。
だけど会社は永続的に続きます。長い目で見た時に、会社に残っている人材が「あの人たちは独立できないよね」と、安っぽく見えるのは悲しいことだと思いませんか?
球団への愛、自分が育ててもらったことに対する恩返しは、自分が居続けることではなくて、球団で得た経験を生かして、次に僕がどういうステップを踏んで行くかを後輩たちに見せることではないか。そう考えて、引退を決意しました。
僕のプロ野球人生は、元々、全然実績のないところからのスタートでした。だから後ろに下がる一歩は絶対に踏めない。そのために僕が決めていたのは、ライバルという存在を作らないこと。
もちろん若い時は誰にも負けない強さを持ちたいと思っていました。でも野球はチームスポーツです。みんなで一丸になって目指すべきは、相手チームに勝つというプロジェクトを完遂すること。チーム内のライバルを引き摺り下ろすようなポジション争いは、組織が求めているものではありません。自分のことしか考えないようでは勝てないし、組織自体も発展しませんよね。