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10年前は“短いメール”で拒否…WWEが41歳里村明衣子に異例の熱烈オファー、「覚悟しておけ!」といざ参戦!
text by
堀江ガンツGantz Horie
photograph by2021 WWE, Inc. All Rights Reserved.
posted2021/02/02 11:00
里村明衣子は異例のNXT UK本格参戦を決めた
VIP待遇の里村がWWEから門前払いを食った過去
また、WWEは世界中から有望な選手をスカウトしているが、その多くは将来性を鑑みた若い選手たち。その中で里村は現在41歳で、中邑真輔と同学年。女子でキャリア26年の大ベテランにWWEがオファーすることは異例中の異例だ。里村は年齢の壁、社長レスラーという立場の壁を二重に乗り越えてのWWE参戦なのである。
そんな、今でこそVIP待遇を受ける里村だったが、じつは10年前、一度WWEから門前払いを食った過去がある。
2011年の東日本大震災により、宮城県仙台市を本拠地とする仙女も壊滅的なダメージを受け、事務所と道場が半壊し興行が打てなくなってしまった。この未曾有の危機に、新崎人生から社長を継ぎ仙女の再建を図った里村だったが、興行再開のメドが立たない中、所属選手が次々と引退、退団。7人いたレスラーは、里村とDASH・チサコのわずか2人だけになってしまった。
この時、「これはもう団体を続けることは無理だ」と思った里村は、イチかバチかWWEのトライアウトを受けることを決意する。そして自分で資料をすべて揃えて、WWE海外担当者に売り込んだが、返ってきたのは「いまは日本人選手は必要としてない」という短いメールの返信のみだった。
当時のWWE女子部門は、まだ“ディーバ”と呼ばれ、試合以上にセクシーさが求められていたような時代。試合内容で魅せる里村は、必要とされなかったのだ。
大きなショックを受けたからこそ
これにより、15年以上にわたり女子プロレス界の第一線で闘い続けてきた自分の価値を否定された里村は大きなショックを受ける。しかし、WWEに門前払いされたことで、「センダイガールズプロレスリングをなんとしてでも続けていく」という覚悟も生まれた。
そして、選手、コーチ、営業、経理、マッチメイク、あらゆる雑用など、なんでもこなしてガムシャラに走り続けた結果、仙女は再び活気を取り戻し、選手層も厚くなった。
また、レスラー里村としてはその間、日本だけでなく海外にも積極的に進出。アメリカの「CHIKARA」、イギリスの「ファイトクラブ・プロ」、ドイツの「WXW」など、各国でタイトルを獲得しトーナメントに優勝するなど大活躍。とくにイギリスでは、2019年9月に最大手の「プログレス」でも女子王者となるなど、絶大な評価を得ている。それが今回の「NXT UK」本格参戦にもつながったのだろう。
そして今、里村は10年前に短いメールで門前払いされたWWEから、三顧の礼で迎えられるまでになったのである。