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松井裕樹「田中さんは超一流なのに、教えるのもうまい」 チーム田中将大+岸、涌井、早川…楽天は常勝軍団になれるか?
text by
田口元義Genki Taguchi
photograph byJIJI PRESS
posted2021/01/30 11:03
2016年自主トレを行う「チーム田中」。田中将大(中央)、則本昂大(左)、松井裕樹。楽天koboスタジアム宮城の室内練習場で
無敗ロードを突き進み、チームを牽引するエースに次ぐ15勝をマーク。新人王に輝いた則本は、翌年から田中の自主トレに加わり、研鑽を積むようになった。
1年目から6年連続2桁勝利。2年目の14年からは、プロ野球史上3人目の5年連続奪三振王にも輝いた。田中の意志を受け継ぎエースの座を勝ち取り、師に恥じぬ成績を残す則本は、こう言い切っている。
「13年の1年間、そのあとも継続して自主トレとかでお付き合いをさせていただいたからこそ、今の僕があると思っています」
「チーム田中」を抜け、「チーム則本」を結成
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その則本は今年、初めて「チーム田中」を抜け、若手たちとともに「チーム則本」を結成し、自主トレを始動させた。「自分もいずれ、田中さんのように年下のピッチャーを引っ張っていけるようにならないといけない」とかねてから想いを語っていたが、それを実現させた。
人に教える。それは、己を鍛えることより、はるかに難しい作業でもある。
体格や骨格、筋肉の量や質など、人間の体は千差万別。自分の体ですら詳細に把握することが難しいとされているのだから、一方通行で押し付けてしまえば、相手の野球人生を大きく狂わせてしまう恐れだってある。特に投手の場合、下半身から上半身まで、精密機器のようにしっかりと投球フォームを構築していくように、実に繊細な生き物である。
田中はそれを理解している。だからまず、今の自分を知り、相手の考えにも耳を傾ける。
「人にアドバイスをしたりするということは、まず自分をわかっていないと言えないことなので。考えを整理して相手と話すことができれば、自分にとって復習になりますし、成長にも繋がりますから」
松井裕樹「超一流のピッチャーなのに……」
田中の教えが一方通行でないひとつの証左が則本であり、19年の松井裕樹だった。