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【箱根駅伝】國學院大がライバル帝京大に「勝ってください」と告げたワケ 両校の“因縁”はなぜ始まった?
posted2021/01/22 11:02
text by
和田悟志Satoshi Wada
photograph by
Yuki Suenaga
「中野さん、勝ってください。僕らに勇気をください」
今年1月3日、箱根駅伝復路のスタート前に、國學院大の前田康弘監督は、帝京大・中野孝行監督にこんな言葉をかけていた。
往路終了時点で國學院大はトップの創価大と6分44秒差の9位と苦戦したのに対し、帝京大はトップと2分31秒差の4位と、まだまだ総合優勝を狙える位置に付けていた。
帝京大と國學院大は、ともに“育成型”のチームで、高校生のスカウトで被ることも多々あり、チームカラーが似ている。それだけに、前田は中野に希望を託したのだった。
「そんな簡単なことではないのはわかっていたけど、創価大をターゲットにすれば自然と順位は上がっていくと思っていました。うちと國學院大は同じような立場だから、どっちが勝ってもそれぞれにとって勇気にはなると思っていたんですね。希望を持って臨みました」
中野も、ライバル校の指揮官の激励に応えるつもりだった。
帝京大のアクシデントで國學院大と並走も
ところが、帝京大は6区の3年生、三原魁人が走り出してすぐに右足の中足骨を疲労骨折するアクシデントに見舞われて後退した。結局6区で國學院大が帝京大をとらえると、復路では両校は前後しながらレースを進めた。たびたび並走する場面もあった。
「今思うと、“勝ってください”っていうのは、“國學院大に勝ってください”っていう意味だったのかな(笑)」と中野は冗談を口にするが、最終10区では終盤に、早大と順大を交えて4校による6位争いを繰り広げた。そして、帝京大が8位、國學院大が9位でレースを終えた。