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“借金処理”の確執も超えて…桑田真澄コーチ就任のウラにある原辰徳監督の“聖域なき改革”とは
text by
鷲田康Yasushi Washida
photograph bySANKEI SHINBUN
posted2021/01/13 17:30
原辰徳監督(左)と並んで会見に臨んだ桑田真澄一軍投手チーフコーチ補佐
原監督は「決して感情で決断はしない」
だが、この異例の人事を実現させた背景には、原監督と桑田さんの、それぞれの指導者としての野球に対する向き合い方の一致があったのではないかと思う。
原監督の指導者としての根底にあるのは固定観念にとらわれないということであり、物事を決めるときには「決して感情で決断はしない」ということがある。
3度目の監督に就任した2019年のシーズンから、監督・原辰徳のチームマネジメントは過去2回とは大きく変化している。
今年のチームスローガンを「1Team!~和と動」としたように、もちろん原監督には従来からのチーム最優先、「個人軍より巨人軍」という考えが根底にはある。
これは過去、2回の監督時代から原監督の不変の根本思想でもある。ただ、そこに3度目の監督となって持ち込んだのがメジャー流の合理主義だった。
物議を醸した増田大輝内野手の投手起用
この2年間、一軍でやってきたのが選手の力を最大限に引き出すために、コンディショニングを最優先とすることだった。
そのために移動日やデーゲームの翌日の練習を個人練習とするなどのアイデアを監督自らが発案して行なってきた。一軍では練習量をある程度制限し、負担の大きな主力選手には定期的な休養日を設けるなどのチームマネジメントを、この2年間は徹底してきている。
指導方法にしても選手に活躍の場を与えるために、複数ポジションの練習を積極的に進めて、データを活用しながら固定観念にとらわれずに起用の幅も広げてきた。
昨年、物議を醸した増田大輝内野手の投手起用なども、従来の当たり前にとらわれず“フォア・ザ・チーム”の根本思想とメジャー流の合理主義が合体した、原流の起用と言えるものだったのである。
そこでさらにその進化を求める中で原監督の目に止まったのが、指導者・桑田真澄の存在だったのだ。