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【追悼】トミー・ラソーダが明かしていた「私の息子」野茂英雄との“寿司とパスタ”、ノーヒッターの思い出
text by
津川晋一Shinichi Tsugawa
photograph byGetty Images
posted2021/01/10 16:50
トミー・ラソーダ氏
「寿司とパスタ、どっちがいい?」と尋ねると……
以来、私と野茂はよく食事に出かけるようになった。彼は食べることが大好きで、何でも美味しそうにほおばっていた。食事に誘うとき「寿司とパスタ、どっちがいい?」と尋ねると、いつもパスタを選んでいたね。日本人は寿司好きだと思っていたから意外だったな。
あの頃から今まで、私は野茂のことを息子のように思ってきたし、彼も私のことをアメリカの父親だと感じてくれているはずだ。
野茂がメジャーに来たばかりのころ、私は彼にこんな話をした。「ここには日本とは全く違う文化と言語があるから、オマエはたくさん苦労すると思う。だけどこれだけは絶対に忘れないで欲しい、私は父親のようにここにいるから。いつだって、何だってオマエのことを助けるつもりだよ」と。
野茂は真剣な表情で、私の目を見つめていた。私たちは心から通じ合っていると感じ、本当に嬉しかったね。
両リーグでノーヒッターを成し遂げた史上4人目の投手に
最も記憶に残る試合は、何と言っても翌年('96年9月17日)にクアーズフィールドで成し遂げたノーヒットノーランだ。打者に有利なあの高地の球場で、ノーヒッターをやるのは奇跡的。私は本当に誇りに思ったし、日本の誰もが誇りに思うべきだと野茂に言ったのを憶えているよ。
そしてボストン時代にも達成('01年4月4日)したから、野茂は両リーグでノーヒッターを成し遂げた史上4人目の投手になった。こんなことができるのは、本当にごく限られた投手だけ。だから野茂には将来的に野球殿堂へ入って欲しいし、入るべきだとも思っている。そうだな、私が彼のことを必ず推薦するよ。
今度、野茂に会う機会があったら、メジャーでの長年の労をねぎらってあげたい。そしてドジャース時代の思い出話に花を咲かせて、改めてこう言ってやりたいね。オマエは本当にたいしたヤツだったな、と。