「来年、お前はドラフト1位でプロに行くことを意識しろ。複数球団の競合で指名されるピッチャーになれ」

　それまでの欲は、いわば他人から与えられたようなものだった。そんな自分からの脱皮を誓うように、早川は覚悟を形とした。

　ルーズリーフに目標を書き、いつでも確認できるよう寮の冷蔵庫に貼ったのだ。

　＜あと1年。ドラ1、絶対に競合！＞

　時を同じくして、早川は主将に任命された。覚悟の体現は、より顕著となった。

「とにかく、勝ちにこだわりたい。『優勝したい』ってスタンスでしたね。それが大前提としてあって、『自分が勝利に導くために何をすべきか？』ってことをずっと考えていました。それが、結果的に冬の練習にも繋がったり、花が開いたのかなって」

©Hideki Sugiyama

左足の側の股関節をちょっと…投球フォームの“微調整”

　ダッシュや長距離ランニングなど、フィジカルトレーニングの徹底も大きいと早川は言うが、開花の決定的な分岐点は投球フォームの微調整だと確信している。

　フォームを変えることは、投手にとって一大決心である。成功すれば能力は飛躍的に伸びるかもしれないが、失敗すればそれまでの努力が水泡に帰す恐れがある。ハイリスク・ハイリターン。それは、投手であれば誰でもわかっていることだ。

「本当に不安だったんですけど」

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