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『鬼滅の刃』をスポーツ科学的に読む! “全集中の呼吸”の効能、イチロー&五郎丸歩の“アレ”と同じ場面は… 

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青木美帆

青木美帆Miho Awokie

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photograph byKyodo News

posted2020/12/08 17:02

『鬼滅の刃』をスポーツ科学的に読む! “全集中の呼吸”の効能、イチロー&五郎丸歩の“アレ”と同じ場面は…<Number Web> photograph by Kyodo News

話題沸騰の『鬼滅の刃』最終巻。スポーツ科学視点で見ても、メチャクチャ面白いのだ!

「人間は、体内で作られるATPというエネルギー源を利用して筋肉を動かしています。ATPは酸素を使わずに作られるものとそうでないものの2種類あるんですが、鬼殺のような激しい運動をするときには、酸素から作られるエネルギーが多く必要になります。

 たくさん酸素を取り込むことで劇的にパフォーマンスが上がるというわけではないと思うんですが、鬼と長時間戦うために、呼吸でたくさんのエネルギーを取り込むというのは理にかなった表現だと思います」

腹式呼吸はインナーマッスルに影響が

 さらに飯田先生は、腹式呼吸が体幹部のインナーマッスルに大きな影響を与えるということも教えてくれた。

「ラグビーのタックルや野球のインパクトの瞬間など、人は大きな力を必要とするときに、無意識に息をフッと強く吐く、もしくは息を止めたりします。こういった動作によって、日常生活ではあまり使えない腹部のインナーマッスルを使うことが可能となり、普段より多くの筋肉を使うことで高いパフォーマンスが発揮されます」

 言われてみると、作品の序盤、炭治郎が『全集中の呼吸』を習得する前の修行で、鱗滝左近次(うろこだき・さこんじ)から『息止め』というテクニックを教わり、腹に力が入っていないと怒られている。

「学術的にも、呼吸によって筋肉や神経をコントロールできるということが証明されています。『全集中の呼吸』をするとパフォーマンスが上がるという設定は、あながちでたらめなものではないんです」

2.“透き通る世界”はフロー状態?

 無限城における猗窩座(あかざ)との再戦で、炭治郎は父から教えられた『透き通る世界』に到達する。

<父さんが教えてくれた“透き通る世界”に入れた時 動きの予測と攻撃の回避の速度が格段に上がる 相手の肺の動き 血管の流れや収縮が透けて見えて 自らの収縮もより速く鮮明にわかった>(コミックス18巻より引用)

 その後炭治郎は、これまでとらえきれなかった猗窩座の動きが、とてもゆっくりしたものに見えるようになる。そして猗窩座は、炭治郎から一切の闘気が消え、彼が「無我の境地」に至ったことを悟る。

「これは、スポーツ心理学でいう『フロー状態』です」と、飯田先生は説明する。

【次ページ】 「ボールが止まって見えた」もその1つ

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