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【契約更改ウラ話】なぜ中日にプロ野球選手会は抗議文を送ったのか ドラゴンズの闇歴史にピリオド?
text by
小西斗真Toma Konishi
photograph byKyodo News
posted2020/12/05 11:03
2度目の契約更改交渉を終え、記者会見する中日の福敬登。今季は最優秀中継ぎの活躍を見せていた
選手を「悪役」にしてはいけないという強い思いも
まずは下交渉の席で選手は球団から引き出せたと受けとっていた譲歩が、本交渉の席で反映されていなかったという点。選手は契約するつもりで来たのに「話が違う」となったわけだ。
おそらくは球団側が曖昧な返答をしたからだろうが「言った」「言わない」の話になった。そうなれば人間は感情の生き物だ。「態度」や「言葉遣い」にも逆なでされ、おまけに保留を伝える記事を読んでみたら「金額の話」で決裂したことになっている。半分はそうかもしれないが、それだけが原因だと言うのは乱暴だろう。少なくとも選手たちは譲歩を勝ち取ったと思って本交渉の席に着いたからだ。
選手会の異例ともいえる早期の対応は、選手を「悪役」にしてはいけないという強い思いもあるはずだ。
コロナ禍で開幕は大幅に遅れ、試合数も削減。無観客でスタートし、制限されたままフィニッシュした。総観客数はセ・リーグで実に81%減(前年比)。法的な側面はあるにせよ、MLBは原則的に日割りで支払った今シーズンの年俸を、NPBは全額支払った。
自営業、飲食業、観光業。世の中には悪戦苦闘しながら、例年よりはるかに少ない年収にあえいでいる人がたくさんいる。そんな中で選手会は「こいつらはよくもっと金を寄越せなんて言えるよな」という声に保留者をさらさせるわけにはいかないのだ。
活躍した高卒ルーキーが減俸、今年のドラフト1位以下に
またベテラン選手からの訴えには、高卒ルーキーのことが含まれていたとも聞いた。
石川昂弥は1500万円から1275万円で初めての契約を更改。提示額に黙ってサインしただけだろうが、曲がりなりにも一軍に上がり、かつ8安打打った。大卒や社会人経由の即戦力ではないのだから、減俸は説得力に欠けるという言い分だ。
ましてや今年のドラフトでは同じ高卒で1位指名の高橋宏斗と石川を上回る1600万円で契約している。「将来の中心選手に」と言いながら、1年後には減俸する。アマチュア球界からの球団イメージ低下を懸念した声だったのだ。