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箱根駅伝出場者は就活に有利? 「選手と主務の序列は…」実業団チームから商社、消防士、YouTuberまで
text by
酒井政人Masato Sakai
photograph byNanae Suzuki
posted2021/01/03 17:02
新年の箱根路を駆ける学生ランナーたちは、その後も各々の道をひた走る
実業団選手の引退と悩ましい問題
かつての日清食品グループなどは契約社員が多かったが、最近の学生は安定志向なのか、正社員として入社するのが大半だ。
「選手が実業団を希望するからといって、やみくもに入れても良くないと思っています。大卒扱いをしてくれて、現役引退後もその企業に残れることを前提に選手たちの就職先を探しています。お金やイメージでチームを選ぼうとする選手もいますが、30歳前後まで競技を続けると、引退後に新たな仕事を探すのは簡単ではありませんから」(A監督)
実業団選手の大半は競技引退後、会社に残り、一般業務をこなすことになる。
陸上部を抱える会社は大企業が多いので、定年まで勤めることができれば生活面での不安はないだろう。しかし、配属先によっては仕事についていけず苦しむ元選手も少なくない。元選手のBさんから聞いた話では、「実業団選手として10年走るよりも、2~3年で引退して一般業務をこなした方が、入社10年後には会社員として出世しているんです」という悩ましい問題もあるようだ。
また会社の都合で陸上部が休部や廃部、活動を縮小する可能性もあるだけに、クレバーな選手たちは先を見越して就職先を選んでいる。
一般就活における「箱根駅伝走りました」の価値
大学3年生になる前後のタイミングで、「就職先をどうしたいのか?」と確認しているチームが多い。実業団志望の選手は競技力を上げることが就活に直結するが、一般企業に進む選手は徐々に就活の準備を始めることになる。
一般企業の就活でも、「箱根駅伝を走った」という実績はかなり武器になるという。ただし、3年生までに出場しないとその恩恵を受けることはできない。箱根駅伝常連校で主務を務め、現在は実業団チームでマネジメント業務をこなすCさんも、一般企業の就活では受けが良かったという。企業からの評価は陸上部員のなかでも序列があるようで、「箱根駅伝出場者、マネージャー、箱根を走っていない選手の順じゃないですかね」という印象を持っている。