情熱のセカンドキャリアBACK NUMBER
西武から戦力外通告→クリケット選手に 40歳木村昇吾の夢は「10億円プレーヤーになる!」
text by
二宮寿朗Toshio Ninomiya
photograph byTakuya Sugiyama
posted2020/11/25 17:00
木村は2003年、横浜ベイスターズ入団。広島を経て西武に移籍。2017年に戦力外通告を受けて引退、クリケットの道へ
背筋がゾッとした
日本で「第一波」が広がっていた3月中旬、スリランカでも感染者が出たことが明らかになった。これを受けて3月16日月曜朝のミーティングでシンハラの活動が2週間ストップすることがチームに伝えられた。
感染の状況によっては2週間以上になり、クラブの施設を一切使えないため練習もできない。木村自身も東京に残している家族が心配だった。クラブの会長に相談して、帰国の許可をもらった。
最短で日本行きの飛行機のチケットは翌々日。しかし直感的に「もっと早く帰らないとマズいんじゃないか」と思い、この日の夜便がたまたま空いていたこともあって滑り込みで予約を取った。
「もうバタバタですよ。自分の道具をグラウンドまで取りに行って、アパートも急いで解約の手続きをして、滞在している日本人の知人に空港まで送ってもらって。
スリランカから帰国してその人に電話したら『木村さん、ギリギリセーフでしたね。もうスリランカの空港はクローズになってしまいましたよ』と。あのとき水曜日の便を予約していたら、僕はずっとアパートの部屋にいなければなりませんでした」
背筋がゾッとした。
これから、どうすりゃいいんだ――
スリランカでは外出禁止令が発令され、違反者は逮捕されるという厳しい態勢を取ることになる。アラフォーのアスリートが何かしらのトレーニングすらできないとなると、体力的にも取り戻せる自信がない。
奇跡とも言える“脱出劇”。
しかしながら視界の片隅に入りつつあったIPLが、遠ざかってしまった。見通しも分からない。だからといって年齢を考えるとチャレンジの時間は限られている。
これから、どうすりゃいいんだ――。
木村昇吾の胸に、焦りが滲み出ていた。
(後編に続く。下の「関連記事」からもご覧になれます)