猛牛のささやきBACK NUMBER
<涙の引退>オリックスを支えた38歳山崎勝己 若手投手、後輩捕手が「勝己さん」を慕った理由
text by
米虫紀子Noriko Yonemushi
photograph byKyodo News
posted2020/11/13 11:00
現役最後の試合を終え、ナインに胴上げされる山崎勝己。ルーキー宮城大弥のプロ初勝利、鈴木優のプロ初セーブをアシストした
日本復帰の中島宏之を誘った山崎
涙、涙の1日だった。
試合前に行われた引退記者会見では、20年間のプロ生活の中でもっとも心に残っている出来事を聞かれて、山崎は声を詰まらせながらこう語った。
「たくさんあるんですけど、一つ言うなら、幼なじみの中島(宏之・巨人)とプレーできたことですね」
2015年から4年間オリックスに在籍した中島とは、1、2分で互いの家を行き来できるほど近所に住んでいた幼なじみ。小学生時代は中島がピッチャーで、バッテリーを組んでいた。
中島が2014年のオフにアメリカから日本球界に復帰する際、オリックスに誘った1人が山崎だった。
「幼稚園から一緒にいて、今でも普通の友達なんですけど、(プロで)同じチームでやれたというのは、本当に奇跡に近いことだと思う。この運命というか、巡り合わせには本当に感謝ですし、あいつには1年でも長く頑張ってもらいたいですね」
サバサバしているように見えて、内には熱いものを秘めている山崎らしい涙だった。
前歯3本折りながらもプレー
ソフトバンク時代には、試合中にファウルチップがマスクを直撃し、前歯を3本折るアクシデントに見舞われたが、激痛に耐えて出場し続けたというど根性エピソードが残っている。引退記者会見でそのことを聞かれると、「そればっかり言われるんで、それしか残せなかったなという、申し訳ない気持ちですね。もっと他の、いいプレーの話ないのかなと思うんですけど」と苦笑した。