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佐藤駿vs鍵山優真vs“お兄さん世代”、フィギュア北京五輪切符を見据えた戦いが始まった
text by
野口美惠Yoshie Noguchi
photograph by Sunao Noto, Nobuaki Tanaka
posted2020/11/11 11:05
ライバル鍵山優真を抑え、東日本選手権で優勝した佐藤駿
“若手2人の対決”となった東日本選手権
この西日本選手権の翌週には、“若手2人の対決”となる東日本選手権が行われた。2人のデッドヒートは昨季から熾烈を極めている。ジュニアGPファイナルは佐藤が制し、世界ジュニア選手権は鍵山が銀メダル。今季も関東ブロックは鍵山が80点以上の大差で勝ち、そして迎えた一戦である。
関東ブロックで苦杯をなめた佐藤は、その後、練習のやり方をイチから見直してきた。まず折に触れてアドバイスを受けていた無良崇人を、定期的なアドバイザーとして迎え、4回転ジャンプのフォームを固めた。「これまで何も考えずに4回転を跳んでいた」という天才肌の佐藤は、調子が悪い日は失敗、良い日は成功、というやり方だったため、試合当日の好不調の運に大きく影響されていたのだ。
「無良さんにみてもらうようになってから、感覚だけで跳んでいた4回転を、意識する部分が決まって確率も上がってきました」という。
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その成果が現れ、東日本のショートでは、冒頭の「4回転トウループ+3回転トウループ」を綺麗に着氷。4回転ルッツは転倒したものの、演技をまとめると、81.84点をマークして首位発進した。
「あまり鍵山君に勝ったという実感は無いです」
そしてフリーでも進化を見せた。冒頭の4回転ルッツをオーバーターンながら片足で降りる。「4回転ルッツを降りて、ちょっと安心しちゃった」という4回転サルコウ、4回転トウループは転倒したが、もう一度集中力を取り戻して、4本目の4回転となるトウループを降りた。さらに演技後半のトリプルアクセル2本を落ち着いて着氷し、高難度のジャンプが続くプログラムを立て直していく演技だった。
「とにかく関東ブロックのあとは、曲かけをして、プログラムのなかでジャンプを決める練習をやってきました。今回もトリプルアクセル2本を決められたのが、進化だと思います。NHK杯は、ショートをノーミスに、全日本選手権はショートもフリーもノーミスにしたいです」
フリー147.34点、総合229.18点で、鍵山を抑えての優勝。存在感をアピールした。
「あまり鍵山君に勝ったという実感は無いですが、ひとまず関東ブロックよりも成長できたかなと思います」
ライバルは鍵山ではなく自分自身。そう言い聞かせるように語った。