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大迫勇也が“カメルーン戦だけ出られた”交渉とは JFA、TV局関係者が語る欧州遠征の「綱渡り」
text by
飯尾篤史Atsushi Iio
photograph byGetty Images
posted2020/10/30 17:01
カメルーン戦に先発出場した大迫勇也。しかし彼を招集するということ1つをとっても、非常に難しい綱渡りを強いられた
プロジェクトチーム内での話し合いとは
日本テレビがヨーロッパのグループ会社を活用することができたのに対し、TBSにはその手がなかった。だが、局内にとあるプロジェクトチームがすでに立ち上がっていた。
「コロナ禍の影響で、TBSでも数多くのスポーツ中継がなくなりました。こういう時期だからこそ、中継の話が突然飛び込んでくるかもしれない。その場合、リモートで、オフチューブでの中継になるだろうと想定して、中継部長の指示でプロジェクトチームが立ち上がっています。ディレクターメインのチームですが、想像をめぐらせて準備していたので、今回も大きな混乱には陥りませんでした」
10月9日のカメルーン戦を日本テレビが中継することは、9月24日に発表された。
さらに、10月13日に開催されるコートジボワール戦をTBSが担当することも、10月1日にアナウンスされた。
中継が正式に決まったとき、高埜は思わずガッツポーズをした。
「この試合は単なる1試合ではない。東京オリンピックに向けてとか、コロナ禍で活力を奪われているなか、日本中に勇気や元気を届けたりとか、いろんな意義を持った特別な試合です。だから、なんとかこの趣旨を理解し、パッションを感じて、一緒にこの試合を作ってほしい、と代理店を通じて訴えさせてもらいました。決まるまで、夜も眠れなかったし、どうしようって毎日不安でした。日本テレビさん、TBSさんに賛同していただけて、本当に感謝しています」
最大のミッションは感染者を……
対戦相手と試合会場がフィックスされ、日本代表メンバーも発表された。そして、テレビ中継もなんとか決まった。
しかし、これでひと息つく者など、JFAの中にはひとりもいなかった。
最大のミッションは感染者をひとりも出すことなく、オランダ遠征を成功させること――。
その意味では、ようやくスタート地点にたどり着いたに過ぎなかったのだ。
(第3回に続く。NumberWeb以外の外部サイトでお読みの方は関連記事『食事会場は授業中の教室のように…ドクター&広報が語る、日本代表の感染予防策と取材対応』よりご覧ください)