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大迫勇也が“カメルーン戦だけ出られた”交渉とは JFA、TV局関係者が語る欧州遠征の「綱渡り」 

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飯尾篤史

飯尾篤史Atsushi Iio

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posted2020/10/30 17:01

大迫勇也が“カメルーン戦だけ出られた”交渉とは JFA、TV局関係者が語る欧州遠征の「綱渡り」<Number Web> photograph by Getty Images

カメルーン戦に先発出場した大迫勇也。しかし彼を招集するということ1つをとっても、非常に難しい綱渡りを強いられた

遅くても試合3カ月前には決まるのに

 日本代表の年間スケジュールは前年12月に発表されるのが通例である。

 そのため、テレビ中継は早ければ1年前から放送局との調整に入り、遅くても試合の3カ月前には決定される。全国中継の場合、系列局の番組編成も調整しなければならないからだ。

 ところが今回、代理店を通じてテレビ局にアプローチを開始したのは、試合開催から1カ月を切った時期だった。

「普通ならありえないことなので、みんな、びっくりしたと思います」

 カメルーンとの初戦を中継することになる日本テレビで、スポーツ局チーフプロデューサーを務める市川浩崇は苦笑した。

「ただ、代表戦をやりたいね、という雰囲気は局内に醸成されていたんです。というのも、3月のアジア2次予選は我々が中継を予定していたんですが、流れてしまった。じゃあ次、ということで9月の親善試合、10月8日のミャンマーとのアジア2次予選の中継も準備していたんですけど、それも流れた。代表戦がないのは寂しいよね、という話はよく出ていたし、8月中旬にAFCが10月のW杯予選も延期すると発表したとき、JFAは何かやるんじゃないか、それが放送できるような試合であれば放送したい、という気持ちが局内にありました」

 つまり、代理店を通じて日本代表戦中継の話が持ち込まれたとき、日本テレビとしては、「待ってました」と言わんばかりの状態だったのだ。

「編成局は相当大変だったと思います」

 とはいえ、日本テレビが準備していたのは8日木曜日の19時からのゴールデンタイム。しかし、カメルーン戦が組まれたのは9日金曜日の21時からだった。そこは「金曜ロードSHOW!」の枠で、すでにCM・協賛が付いている。そこから調整するのは、簡単なことではなかった。

「編成局は相当大変だったと思います。ただ、日本テレビは高校サッカーをはじめ、サッカーに関して思い入れの強い局。高校サッカーを卒業した選手たちが今、日本代表として頑張っているという面もありますし、日本代表の力になりたいという思いが局内にありました。各部署にもスポーツのOBがおりますし、何より日本のスポーツ界を代表してサッカーの日本代表が海外で親善試合を行なう。そのお手伝いができるなら光栄という考えがあったので、局内の気持ちをひとつにするのは難しいことではなかったです」

【次ページ】 現場に誰もいない、という大問題

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