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ハミルトン、シューマッハの金字塔91勝に到達! 8年前“きつい批判”の中で下した賢明な決断とは
text by
尾張正博Masahiro Owari
photograph byGetty Images
posted2020/10/23 17:00
ハミルトンはトロフィーを空中に何度も投げ上げ、ミハエルの偉業に並んだ喜びを爆発させた
メルセデスへの移籍にきつい批判を受けた
07年にF1デビューしたハミルトンはタイトル争いに絡むことができなかったシーズンが何度かあったが、そのようなシーズンでも最低1勝は挙げ続けてきた。これは現役ドライバーの中ではハミルトンただひとりである。
今回のハミルトンの偉業に対して、「メルセデスのマシンに乗っていれば、勝つのは当たり前だ」という声も聞かれる。しかし、今から8年前の12年の秋、翌年よりマクラーレンからメルセデスへの移籍を決意したハミルトンの選択に、多くの者が首を傾げたのも事実だ。
「あれは僕にとってとても大きな決断だった。みんなからはかなりきつい批判を受けたけどね」
メルセデス加入を決めたのは、ルイス本人だ
ハミルトンがメルセデスで最初から“勝つのは当たり前”という最強マシンを手にしていたわけではないことは、移籍した13年には1勝しかしていないことからもわかる。
それでもハミルトンはチームを信じ、マシンを速くするためにスタッフとともに目に見えない努力を怠らなかった。それを同じチームで見てきたメルセデスのトト・ウォルフ代表はこう語る。
「F1というスポーツはコース上で相手よりも速く走ることも大切だが、それ以前に最高のマシンに乗ることができるよう自らをマネージメントすることも重要となる。私はこれまで多くの才能のあるドライバーが間違った判断をしたり、賢明でない決断をしたりするのを見てきた。13年にメルセデスに加入することを決めたのは、ほかのだれでもないルイス本人だ」