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ハミルトン、シューマッハの金字塔91勝に到達! 8年前“きつい批判”の中で下した賢明な決断とは
posted2020/10/23 17:00
text by
尾張正博Masahiro Owari
photograph by
Getty Images
誰もが近づくことさえ想像もしていなかった記録にルイス・ハミルトン(メルセデス)がついに到達した。
10月11日、第11戦アイフェルGPで通算91勝目を挙げ、ミハエル・シューマッハが持つ歴代最多勝記録に並んだ。
「子供のころ、ミハエルが多くのレースで優勝する姿を僕たち多くのドライバーが見てきた。だから、僕は弟とレースのゲームで遊ぶときはミハエルを選んでいた。いつかF1ドライバーになることを夢見ていたけど、ミハエルの記録に近づくなんて想像もしていなかった。だって、その勝利数は途方もない数字だったから」
91勝という記録に到達するのは不可能だと
この記録がいかに凄いかということは、シューマッハとハミルトンに次ぐ3位のセバスチャン・ベッテル(フェラーリ)が53勝ということからもわかる。2010年から4連覇しているベッテルは、これまで何度もハミルトンとバトルしてきた好敵手である。そのベッテルですら勝率は約21%だから、年間20戦のシーズンをあと10年戦わないと追いつけない計算となる。91勝という数字は、歴代3位のベッテルですら、簡単には届きそうもない大記録なのだ。
その「91勝目」となったアイフェルGPでハミルトンと優勝争いを演じ、2位でフィニッシュしたマックス・フェルスタッペン(レッドブル)もまた、こう言ってハミルトンを称えた。
「91勝という記録は皆が到達するのはほぼ不可能だと思っていた。その記録に到達する瞬間をライバルとして目の当たりにできて、ただただ興奮している」
この偉業が達成された理由が、ハミルトンの類稀なるドライビング・テクニックにあることは言うまでもない。07年にマクラーレンでチームメートだったフェルナンド・アロンソは、その能力の高さを間近で見てきたひとりだ。
「現代F1において最高のドライバーを挙げるとしたら、自分は喜んでルイスの名前を挙げる。彼が特別なのは、マシンが圧倒的に速いときはもちろん、選手権に勝てるほどの性能でないマシンでも自らのテクニックで勝利できる数少ないドライバーだからだ」