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実は恋多き男!? 祝・80歳ペレの知ってるようで知らないキング伝説&生涯ベストゴールとは
text by
沢田啓明Hiroaki Sawada
photograph byGetty Images
posted2020/10/23 06:00
自身が高く評価するキリアン・ムバッペと神様ペレ。サッカー王国ブラジルに数々の伝説を残している
ペレのあだ名の由来とは……
4歳になる直前、父親がサンパウロ州の中都市バウルーの市役所で働きながら地元のセミプロチームでプレーすることになり、一家でバウルーへ引っ越した。
息子は父親からフットボールの基本を教わり、地元のアマチュアチームでプレーした。とても小さくて痩せていたが、スピードとテクニックが飛び抜けており、彼を見ようと大人たちが鈴なりになったという。
「ビレ」というGKのファンで、友人と遊びでGKをしていてシュートをキャッチすると、「ビレ、ビレ」と叫んで喜んでいた。ところが、あるとき間違えて「ペレ、ペレ」と発音してしまい、以後、それが彼のあだ名となった。
バウルーは20世紀前半以降、日本人が農業移住し、日本人や日系人が多く住んでいた。ペレの家の近所にサカイという一家が住んでおり、ペレはその家のネウザという日系二世の美しい少女に恋心を抱くようになる。
ネウザも彼の気持ちに気付いてか、試合の応援に行くようになった。「ペレの一家は裕福ではなかったけれど、みんなきちんとした人たちでした」と後に語っている。
15歳でサントス加入、16歳でセレソン
ここから始まるペレのキャリアは、どう考えても荒唐無稽な夢物語としか思えない。
13歳時、地元のバウルーACのU-17の入団テストを受けて合格する。自分よりはるかに年上でずっと大柄な少年たちに混じって練習を積み、ドリブルで何人でも抜き去り、ありとあらゆる種類のパスが出せて、両足と頭で点が取れるという完全無欠のアタッカーに育っていく。
15歳のときには、名門サントスの入団テストを受けて合格。1957年、16歳で公式戦でデビューし、この年のサンパウロ州選手権で17点を奪って得点王(以来、8季連続で得点王に輝く)。この年の7月、16歳6カ月でブラジル代表に選ばれ、アルゼンチン代表との強化試合に途中出場していきなり得点を決める。