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【ドラフト】「奪三振率15.00の快速王子」「182cm技巧派イケメン」八学大“道道コンビ”は指名なるか?
text by
永田遼太郎Ryotaro Nagata
photograph byRyotaro Nagata
posted2020/10/22 11:03
八戸学院大学からプロ野球入りを目指す大道温貴(左)と中道佑哉(右)
大道は、昨夏から夏と冬の年2回、自身を追い込む時期を作っている。試合予定がない冬の期間を“第1の冬”とするならば、春シーズン終了後から秋季リーグ開幕までの期間を“第2の冬”と捉え、その間、自身を極限まで鍛え上げるのだ。今年に入ってもそれは継続し、コロナ自粛明けの6月からリーグ開幕までの2カ月半を小キャンプと捉え自身の身体を追い込んだ。
その効果は数字にも表れた。この秋、大道が投げた試合を5試合ほど見たが、なかでも目に付いたのが相手打者の空振りの多さである。ストレートの最速は150kmだが、打者寄りのリリースポイントから繰り出されるため、スピードガン表示以上の「圧」を感じさせる。
さらに本人が変化球で一番の自信を持っているというスライダーに、正村公弘監督が絶賛する新球のスプリット、昨年まで決め球に使用していたチェンジアップと球種が豊富で、そのいずれも空振りが獲れるほど質が高い。
その完成度を証明したのが第4週の富士大学戦だった。初回こそ立ち上がりを攻められ、1失点を喫したが、尻上がりに調子を上げると2度の5者連続三振を含む、毎回の18奪三振。2014年春に富士大学の多和田真三郎(現埼玉西武)が記録した1試合最多奪三振記録「18」に並ぶ快投を見せた。
「試合で負けて、ピッチングでは勝った感じですかね」
試合後、苦笑しながら大道は本音を漏らした。
ロッテスカウト「本当に良い投げ方をしています」
今秋のリーグ戦で奪った三振の数は36イニングで60個。惜しくもリーグ記録の64個には届かなかったが、奪三振率の15.00という圧倒的数字を見れば、彼がいかに優れたピッチャーかが分かる。秋季リーグの最終成績は6試合、36イニングを投げて防御率0.25。自責点はわずか1で北東北大学野球の最優秀防御率を受賞した。
富士大学戦を視察した千葉ロッテ・柳沼強スカウトは驚異の奪三振率を次のように分析した。
「彼は常に強く腕を振れるから、相手バッターも変化球に手が出ますよね。体も強いのでバテないし、壊れない。本当に良い投げ方をしています」
大学1年の春季リーグでいきなり開幕投手を任された大道。そこからの4年間は大きな怪我もなく、コンスタントに成績を積み上げた。前出の奪三振率も1年春は7.06だったのが、3年春8.91→3年秋10.18→4年秋は15.00と年を追う毎に上がっている。正村監督の指導の下、正しい鍛錬を積んできた証拠とも言える。