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石川祐希は憧れではなく、ライバルであるべき 海外挑戦へ警鐘鳴らす古賀太一郎の言葉の重み
text by
田中夕子Yuko Tanaka
photograph byTakahisa Hirano/AFLO
posted2020/09/24 11:40
リベロの古賀太一郎は5シーズンに渡って海外でプレー。昨季までポーランドのヴァルタ・ザビエルチェに所属していた
「必要なのは“教育”なんだと思います」
互いにとってメリットこそあれ、デメリットはないように見えるが、長い目で見れば違う。古賀は力強く語る。
「福澤さんのように、ちゃんと会社とそういう契約を結べるだけの努力と準備をしていたり、石川のようにプロとして稼げるようになる選手は別として、そういう仕組みがわかっておらず、ただ海外へ行きたいと思って飛び出すだけではリスクも大きいし、きついです。
実際、海外へ出て行く選手は増えていますが、その仕組み自体をよくわかっていないので、会社を辞めて、海外へ飛び出したものの残念ながら次の契約に結び付かず、路頭に迷う選手も出てきてしまっているというのが現状です。海外での実績がない中で一度途絶えてしまうと、次の契約を勝ち取るのは難しいし、日本人のエージェントが世界のトップにいないことで、エージェントの意のままに言いくるめられてしまうのも事実。僕自身も(渡欧した)当初はそれがわかっていませんでしたし、必要なのは“教育”なんだと思います」
海外へ行ってどうなりたいのか
学校教育とは異なる、バレーボール選手として必要な教育。海外でプレーするということだけでも、知る、知らない、という小さな違いが大きな差に変わる、と古賀は言う。
「日本で何年か経験を重ねたから海外でやってみたいという選手と、ここから一気に飛躍してやると思う選手。前者はそもそもの設定がゴールだけど、後者はスタートですよね。同じシーズンを過ごしていても、結果を出してよかったで終わってしまうのか、この1本、この1勝が来シーズンのためとガツガツするかで全然違う。
海外へ行ってどうなりたいか。そのために何をしなければいけないか。今は海外でプレーすることも身近になってきたからこそ、その本質を知らなきゃダメ。バレーボールの指導者にも、実技を教えることと同じぐらい、この先どうなるために何をすべきか、ということや日本と海外の仕組みそのものを教えることも求められていると思います」