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石川祐希は憧れではなく、ライバルであるべき 海外挑戦へ警鐘鳴らす古賀太一郎の言葉の重み
text by
田中夕子Yuko Tanaka
photograph byTakahisa Hirano/AFLO
posted2020/09/24 11:40
リベロの古賀太一郎は5シーズンに渡って海外でプレー。昨季までポーランドのヴァルタ・ザビエルチェに所属していた
来季の提示額は「50%カット」
「リーグが中止になったので、その分が昨年の契約から削られ、3月の時点で(報酬は)20%カットされたんです。さらにクラブからは『来年もできるなら契約したいけれど、残るなら年俸は50%カットさせてくれ』と。コロナもどうなるかわからない状況で、それは今だけと限ったことではないし、もっと状況は悪化するかもしれない。家族を路頭に迷わせるわけにもいかないですし、それでもいいから海外でやりたい、と安易には考えられない。
何よりプロである以上、一度給料を下げてしまうともう一度上げるのはものすごく難しい。安売りしたらダメなんですよ。それが、自分のやっていることに対するプライドでもあるわけですから」
企業選手のメリット、デメリット
前述の通り、プロ選手として海外でプレーし、年々クラブやリーグを変え、キャリアアップを遂げる道筋は、他競技と変わらぬ図式であるように見えるが、細かく紐解くと、日本のバレーボール界独自の複雑な事情が露呈する。
コロナ禍の今季も昨季に続いて、石川祐希がイタリアで、福澤達哉がフランスでプレーし、前回のコラムでも記した井手智がドイツへと渡った。この厳しい状況下でも海を渡り、世界で戦う選手たちの存在は日本バレーボール界の強化、発展という目で見れば明るい希望の光であるのは間違いない。
だが一方で、契約面に目を向ければどうか。
石川のように始めから企業に属することなく、プロとして活躍の場を海外に求め、着実なキャリアアップを遂げた選手は例外だ。福澤は現在もパナソニックに所属し、かつて同じパリ・バレーに在籍した本間隆太はジェイテクトに、そして古賀もまたフィンランド、パリでの契約時は豊田合成に在籍する、いわば“企業選手”だった。
純粋なプロ選手であれば、報酬はクラブと選手間で契約が為されて支払われるが、企業に属する選手であれば、海外でプレーしていようと報酬が支払われるのは会社から。クラブからの契約金や年俸はそれぞれが所属する会社へと支払われる。
つまり、選手の立場から見れば自らがプレーするクラブの経営状況に関わらず、日本にいた時とほぼ変わらぬ一定収入は得られる。一方のクラブ側にとっても、通常なら日本代表でプレーするほどキャリアがある選手だったとしても、それが企業に属したまま渡欧した、期間限定の契約であれば本来のキャリアに見合う金額には到底及ばない安値でも契約を結べるという利点があるのだ。