今でも忘れない、ねらった球種

　阪神は前年のリーグチャンピオン。星野仙一からバトンを渡された岡田彰布が、中日も落合博満が新監督に就任し、このシーズンを制する。両チームが強烈なライバル関係にあったことを物語る壮絶な戦い。同点打を打った井端氏は、打った球種、ねらった理由を今でも鮮明に記憶している。

「カーブを打ったんです。展開もよく覚えていますよ。井川（慶）が先発して、攻略したんですよね。あの試合のネクスト（バッターズサークル）でもそうですし、それまでの2日間もそうですけど、球筋を観察しているわけですよ。真っ直ぐはすごいスピンがかかっていた。もちろん、それを狙っていくという考えもあります。その一方で、当時のカーブはまだそれほどでもなかった。それを打っていく方が確率が高いんじゃないかと」

　のちにカーブも超一流の域に達するが、背番号92の藤川の持ち球の中では、まだつけいる隙のある球種だった。これ以降、井端氏は藤川と対戦するたびにカーブに的を絞った。

「最後の失点は僕だったはず」

「すると、次の年（2005年）のオールスターで藤川に言われたんですよ。井端さん、僕のカーブ待ってるでしょ？ってね」

　井端氏の顔を見て確信した藤川は、もうカーブを投げてくることはほとんどなくなったそうだ。先発か、リリーフか。首脳陣も決めかねていた藤川の起用法が、このシーズンの26試合（すべてリリーフ）で固まる。そして22番に変更した翌05年に覚醒。球史に残る「JFK」をチームの軸に据え、中日から覇権を奪回する。

　ちなみに藤川から挙げた井端氏の通算打点は「2」である。

「あ、じゃあもう一つの打点はわかりますよ。球児の連続無失点記録（38試合）がスタートする前の、最後の失点は僕だったはずです」

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