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日本縦断の自転車ギネス記録は、
最高効率の走りと「神風」が生んだ。
text by
柳橋閑Kan Yanagibashi
photograph byKenichi Yamamoto
posted2020/08/29 19:05
風の抵抗も道路の凹凸も、2600km積み重なれば大きな差になる。繊細な競技なのだ。
2600km走ってパンク、トラブル無し。
──バイクの話になったので機材についてもうかがいたいんですが、自転車本体はどういう基準で選んだんですか。
とにかく長く走るので、普段ロードレースで使っているバイクよりも快適性が高くて、疲れが溜まりにくいというという観点で選びました。スペシャライズドの「Sワークス ルーベ チーム」というモデルをベースに、コンフォート仕様のパーツを付けました。
といっても、DHバーを付け、サドルをレースのときより少し快適性の高いものに変え、ハンドルのバーテープをちょっと厚めに、タイヤを少し太いものにしたくらいです。組み上げたのはスタートの5日前ぐらいでした。
──そんな直前で大丈夫なものですか!?
去年一度乗ったことがあるバイクなので、ポジションも分かっているし、自転車に関してはほとんど心配してなかったです。
──道中メカトラブルは?
いっさいなかったですね。パンクもゼロです。
──2600kmも走ってゼロというのはすごいですね。秘訣は?
メンテナンスも大事ですけど、走り方もありますよね。簡単にいうと、路面をちゃんと見て、小さい段差や、ちょっとした砂利を必ず避けること。自転車仲間といっしょに走っていると、けっこう路面を見ていないなと感じることがあります。
──それにしても、毎日400km近く、1週間走り続けて、よくお尻が痛くならないなと思ってしまうんですが……。
ウェアの生地と擦れるような痛みはなかったんですけど、エアロポジションをとっていると骨盤が寝た感じになるので、股間が痺れたり、振動でサドルにあたって痛むというのはありました。体の痛みとしてはそれがいちばん大きかったかな。とくに北海道に入ってからは直線の道でエアロポジションが続くのできつかったですね。
──何か対策はしたんですか。
途中からお尻のパッドに塗るシャモアクリームをいつもの5倍ぐらいにしました。そうしたらだいぶよくなりましたね。あとは、フラットな道でも何分かに一回はダンシングを入れて、股関節まわりをほぐすようにしていました。