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山崎康晃の帝京時代と今を結ぶもの。
「ほんとに悔しい。でも絶対に……」
text by
日比野恭三Kyozo Hibino
photograph byNaoya Sanuki
posted2020/08/07 11:40
7月26日に満塁弾を浴びて以来、セットアッパーに配置転換。無失点でホールドを重ねて復調気配は見せているが。
高校時代と現在が強く結びついている。
筆者は耳を傾けつつ、いまの気持ちも尋ねてみたい欲求をこらえていた。感染防止策が徹底されている現状、球場での自由なぶら下がり取材はできない。それだけに本人から生の言葉を聞ける貴重なチャンスではあったが、あくまでテーマありきのインタビューだ。逸脱は許されない。
すると、高校時代を振り返っていたはずの山崎が自ら、現在について語り始めた。インタビュアーへのサービス精神や配慮というより、高校時代と現在とが強く結びついているがゆえの、必然の言及だった。
「リンクさせると、いまもそうですよね」
「甲子園に出て優勝していたら……」
山崎は言った。
「ほんとに悔しいです。でも、その悔しさは絶対にムダじゃない。いま、客観的に自分のことを見ると、この気持ちは絶対に生きてくると思うんです。悔しい気持ちが形になるって、ぼくは絶対に保証できる。そういう人生を歩んできたので。自分の体で体現してきたので」
はっきりとは言わなかったが、ジャイアンツ戦での途中降板が念頭にあることは明らかだった。山崎は続ける。
「だから、いつまで経っても投げやりになれないっていうか……。ときには、投げだしたくなってしまうこともあるんですよ。『もういい!』って。『9回(最終回)を投げられないならファームに落としてくれ!』って。だけど、いままでそういう野球人生を生きてきたので、『おれ、これで成功してきたんだよな』っていう思いが自分の中にあるんです。それが、投げやりになれない理由です。
高校時代も、大学時代も、悔しい気持ちが自分をつくってきたし、自分の財産だと思っている。ムダにしてほしくないっていうか、絶対に形になるって信じ抜くことが大事なんだということを、ぼくはNumberを見ている方たちに強く伝えたいと思います」
最後はいつの間にか読者へのメッセージになっていた。
こう付け加えながら、山崎はまた笑顔になる。
「甲子園に出て優勝していたら、かえってどうなってたかなって。満足しちゃって終わってたんじゃないかな、なんて思いますよね」