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体操になぜ採点があるのだろう。
漫画『ムーンランド』で考える。
text by
松尾奈々絵(マンガナイト)Nanae Matsuo
photograph by©山岸菜/集英社
posted2020/08/20 07:00
主人公のライバル、堂ヶ瀬朔良の平行棒の演技。体操選手たちが何をしているか、どこが難しいか、そしていかに美しいかが伝わるシーンが目白押しだ。
マンガで見方を知ると実物も好きになる。
自己表現をしたい主人公と、上昇・承認欲求が強いライバルという対比は多くの作品で使われてきたが、「目標が違っても体操は一緒にできる」という1つの部の中でこの2人の欲求がどう変化するのか、はたまた変化しないのかは興味深い。
マンガやアニメでルールを覚えてそのスポーツを実際に見るようになる人は多い。そういう意味でも、『ムーンランド』は体操の入門書として最適な作品だろう。まっすぐ伸びた腕や脚、綺麗な着地など、体操の美しさと難しさが多くの人の心を掴むはずだ。
そして何よりこの作品の良いところは、作者が体操を好きな気持ちが伝わってくることだ。話を重ねるごとに体操シーンの迫力が増し、差し込まれるエピソードもつい人に話したくなる。彼らかどう成長していくのかを見届けたい。