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飯塚翔太、走る場所を探した3カ月。
四継メンバーで“リモート”リレーも。
posted2020/07/12 11:50
text by
田中大貴Daiki Tanaka
photograph by
Asami Enomoto/JMPA
久しぶりに向かい合うと、身長186cmの肉体はさらに大きくなっているように感じた。
上半身と下半身のバランスは良いが、筋肉の盛り上がりはランニングウエアを着ていても顕著にわかるくらい、大きくなっていた。
――身体、大きくなりました?
「わかります? 今まではなかなかできませんでしたが、自粛期間中に家にいる時間が続く中で、筋力トレーニングを徹底的に行って、食事管理もさらに徹底し、身体のサイズを大きくすることに成功しました」
そう語るのはリオデジャネイロ五輪陸上男子4×100mリレー銀メダリストの飯塚翔太。
日本の短距離界で身体のサイズはトップクラス、欧米の選手にも引けをとらない。
3月に出場予定だった大会に新型コロナウイルス感染症の影響で出場できず、4月からは練習拠点としている味の素ナショナルトレーニングセンターの使用が1カ月半ほど禁止された。飯塚ら、五輪を目指す陸上界のトップ選手らはどのようにして過ごしてきたのだろうか。
苦労した「走れる場所」の確保。
「移動が制限される中で、練習場所を探すのに苦労しました。自宅でできることに限りがある中で、トレーニング場を貸してもらい、誰とも接触しない時間に使用し、ウエイトトレーニングを行いました。自宅では体幹と、競技映像を観てイメージを膨らませるトレーニングが中心。ただ、走る場所がありませんでした。だから、誰もいない時間帯の公園や河川敷を必死に走っていました。他の選手からも練習できる場所の情報をもらったりしていました」
五輪メダリストは身体を動かし、走れる場所を探し続けた。
「練習は場所と時間を工夫して何とかなりました。ただ、何よりもきつかったのは陸上を始めてから初めて目標とする大会を失っていたこと。コロナの影響で予定していたスケジュールはほぼ全て白紙になりました。延期と発表されても、中止になるかもしれない。今も、本来であれば日本選手権が終わって、東京五輪の代表選手が発表されている時期です。次に出場する大会が見えない中で、心身のピーキングも含めて、精神的に自分をどう保つかが、とてもきつい状態でした」