ツバメの観察日記BACK NUMBER
ヤクルト開幕投手、石川雅規40歳。
頭脳と義侠心、身の丈に合う投球。
posted2020/06/19 07:00
text by
長谷川晶一Shoichi Hasegawa
photograph by
KYODO
身の丈に合った人生を歩む――。
長年にわたって石川雅規のピッチングを見ていてつかんだ人生のモットーだ。かつては、多少の背伸びをしてもいいから、「もっと高く、もっと上を!」という若者特有のギラギラした野心が、先日50代を迎えた僕にもあったような気がする。
目の前の大人が、「身の丈で生きろ」と口にしようものなら、「夢をなくしたあんな大人にはなりたくない」と猛反発したはずだ。
けれども、年齢を重ね、自分のできることとできないことを悟り、現実を知ることによって、いつしか背伸びをすることをやめ、気がつけば現実に即した生き方を、つまりは身の丈に合った生き方を歩むようになっていた。
40歳を迎えてもなおローテーションの中心。
こんな考えに思い至るようになったのは、長年にわたって黙々と投げ続ける石川のピッチングを見続けたことと無縁ではない。
公称167センチの石川は、まさにその身の丈に合ったピッチングで、プロの世界を18年間も生き抜いてきた。
2001(平成13)年ドラフトで、ヤクルトが自由獲得枠で指名したときには、まさかここまでの大投手になるとは予想もしていなかった。
秋田商業から青山学院大学を経たルーキーがいきなり1年目の02年に12勝9敗で新人王を獲得したときにも驚いたが、それからおよそ20年近く投げ続け、40歳を迎えてもなおローテーションの中心にいることは驚嘆に値するだろう。
現役最多となる通算171勝で、200勝まではあと29勝。なかなかチームが浮上できなくて苦しんだ昨シーズン、チーム最多となる8勝を挙げたのが石川だった。
9月6日には史上14人目となる「巨人戦通算30勝」をマーク。現役にしてすでに、球史に残る成績を挙げている。「本当にプロで活躍できるのか?」と疑ってしまった自身の不明を恥じたい。